マイナス金利が金融市場や実体経済に与える影響とは? 日銀会合結果Q&A
Q:マイナス金利を導入した例はあるのか?
A:現在、ユーロ圏、スイス、スウェーデン、デンマークでマイナス金利が導入されています。これだけ多くの国が導入していることから、いまやマイナス金利は一般的な金融政策の手段となりつつあります。なお、これらの国はいずれもデフレの脅威にさらされているという共通点があります。
Q:マイナス金利の対象は?
A:マイナス金利の対象は、民間銀行が日銀に預けている預金、すなわち日銀当座預金残高です。ただし、日銀当座預金の全額に対してではなく、ある一定の部分だけに適用されるという仕組みです。すでにある日銀当座預金(およそ220兆円、基礎残高部分という)に対しては引き続き0.1%の金利がつくので(付利という)、マイナス金利が適用されるのは新たに日銀当座預金に持ち込まれた部分(政策金利残高という)に対してです。なお、現時点の政策金利残高は無視できる範囲内の額なので、マイナス金利導入によって、ただちに多額の金利を(民間銀行が日銀に)支払う必要性が生じることはありません。もっとも、今後新たに積み上げられる日銀当座預金に対してはマイナス金利が適用されるため、民間銀行の行動がどのように変化するか注目されます。
Q:マイナス金利導入で実体経済は?
A:1.民間銀行が(マイナス金利を嫌って)日銀当座預金に資金を寝かせて置くのを止めればそれが企業への貸し出しに回る、2.金利が下がれば借り入れコスト低下がするため企業側も積極的に借り入れを行う、という効果が期待されます。しかしながら、日本の金利は既に異例の低水準にあるため、そこからさらに下がったとしても実体経済を直接的に刺激する効果はほとんど期待できないといってよいでしょう。
Q:マイナス金利導入で長期金利は?
A:金利は翌日物から2年、10年、30年といった具合に期間がありますが、この期間ごとの金利を描いた曲線をイールド・カーブといいます。翌日物の金利は中央銀行が操作し、それ以降の金利は市場参加者の取引によって決定されるので、中央銀行の行動およびその予想は長期金利に大きな影響を与えます。日銀は、金利の出発点をマイナスに引き下げることで、より長期のゾーンまで金利を引き下げる効果を期待しています。1月29日時点のイールド・カーブをみると、驚くべきことに7年ゾーンまでマイナス金利に突入しています。1年前とのイールド・カーブと比較すると、その変化がみてとれます。