マイナス金利が金融市場や実体経済に与える影響とは? 日銀会合結果Q&A
1月29日、日銀は「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」という新たな金融政策のパッケージを発表しました。いわゆる追加緩和です。そして、今回の目玉はマイナス金利。これを受けて金融市場では急激に円安・株高・金利低下が進みました。今回はこのマイナス金利政策の意味とそれが金融市場や実体経済にどのような影響を与えるかを第一生命経済研究所のエコノミスト・藤代宏一さんが、Q&A形式で解説します。
Q:日銀が追加緩和に踏み切った背景は?
A:日銀は2%の物価目標を掲げ、それを達成するための手段として2013年4月に量的・質的金融緩和を導入しました。しかしながら、現在の消費者物価指数は原油安の影響により、上昇率がほぼゼロ%の状態です。日銀は「2016年度後半」には物価目標の2%に到達するとの予想を示していましたが、最近の原油安によってその到達時期が「2017年度前半」になるとの予想に変更を余儀なくされました。これ以上の後ろ倒しを回避するために日銀は追加緩和に踏み切ったというわけです。
Q:原油価格下落による物価下落は良いことなのでは?
A:確かにエネルギー価格の下落は消費者にとって喜ばしいことですが、一方でそうした傾向が長引くと悪い影響もでてきます。人々のデフレマインドが復活してしまうからです。デフレマインドとは「物価の下落が続く」、「とにかく物価が下がることは良いこと」という思考パターンで、90年代後半から20年近く続いたデフレ経済の中で日本人に染み着いてしまったものです。人々がこうした思考を持つと、過度な値下げ競争が生じる下で企業の売上高が減少し、それが賃金の下落につながるという悪循環に陥ってしまいます。企業業績が悪化すれば株価も下落基調が強まってしまうので悪い影響が多いです。
Q:なぜマイナス金利なのか?
A:日銀は量的・質的金融緩和という政策の下、年80兆円というペースで国債を市場から買い上げて長期金利を引き下げているほか、日本株を年3兆円のペースで購入することによって株式市場をてこ入れしています。これらの買い入れペースを一段と引き上げて金融緩和を強化することも有力な選択肢なのですが、そこには様々な問題があるので、今回、日銀は新たにマイナス金利を導入して金融緩和を強化することを選択しました。