野村万作、萬斎、裕基の3代出演「ファミリーで楽しんで」 大阪で新春狂言2025
1月恒例の「万作萬斎新春狂言2025」が1月22、23の両日、大阪市北区のサンケイホールブリーゼで行われる。出演は野村万作、萬斎、裕基の親子3代。「新春でもあり、親子3代で楽しんでいただけるとうれしいですね」と萬斎。「子供さんでも分かりやすく笑っていただける演目をそろえました」と話す。 人間国宝で文化勲章受章者の万作は今年6月に94歳を迎えるが、今も精神性の深い演技で舞台を勤め続けている。脂の乗った芸で古典から新作まで多才ぶりを発揮する萬斎に、その長男でフレッシュで気品ある舞台を見せる裕基。今回の公演自体、親子3代が出演し、それぞれの曲でシテを勤める。 「年代の違う3世代の狂言師がそろう面白さを感じていただきたいですね」と萬斎。その上で「父の舞台は今や全てが自然体。意図的なものを見せないのがすごい。父が演じると一挙手一投足が感動を呼ぶ。ミラクルです」と父、万作の芸を語る。 長男の裕基については、「今は楷書の芸のエネルギーの時代。若木の桜」と評し、裕基自身は「3代の中では若い僕が一番、パワーがあると思う。3代それぞれのエネルギーを、見てくださるお客さまの活力にしていただければ」と意気込みを語る。 そして萬斎自身は「もうすぐ還暦。技術と体力と経験値と全部そろっていて、狂言師として脂の乗ってくる年代。そういう芸をお見せしたい」と語った。 公演はまず、正月の儀式でもある謡初(うたいぞめ)「雪山」で始まり、続いて万作が「魚説法(うおぜっぽう)」を勤める。お経も知らない新発意(しんぼち=出家したての修行僧)がお布施ほしさに供養を引き受ける。魚の名を連ねてごまかそうとするのだが-。言葉遊びの面白さに触れる演目だ。 萬斎の「附子(ぶす)」は、教科書にも掲載されるようなポピュラーな演目だ。主人から猛毒の番を命じられた太郎冠者と次郎冠者。怖いもの見たさでふたを開けると中に入っていたのは毒ではなく砂糖で-。萬斎は「人間の欲望と理性の葛藤を描いています。笑いの中に人間の本質をついていて、よくできたお話だと思います」と話す。 裕基はシュールな笑いの作品「茸(くさびら)」を勤める。家の中にキノコが生え、取っても取ってもなくならない。駆除を頼まれた山伏が祈禱を始めるが増えていくばかり。