経済性と社会性を両立するノウフクとは、トークセッションで議論
■有機栽培で農産物に付加価値を
有機農業を行うアグリーンハート(青森県黒石市)の佐藤拓郎社長は、自身の病気や叔父のケガがきっかけで、農福連携に取り組み始めた。 佐藤社長は、「自分が病気になったときに家族経営の限界を感じた。同時期に、ケガで仕事ができなくなった叔父に、農業で生きがいを作れないかと考え、農福連携を始めた」と語る。 しかし、当初はうまくいかなかった。連携する就労継続支援B型事業所の利用者に、ほうれん草の収穫から袋詰めまでを依頼したが、「自分たちが100できるところ、50くらいになってしまった」。佐藤社長の父からは、農福連携の継続は「難しいのでは」と言われた。そこで、佐藤社長は「高付加価値商品ならどうか」と考え、たどりついたのが有機農業だった。 佐藤社長は、農福連携を通じて様々な課題解決を考える。就労支援については農福連携の対象を障がい者だけではなく、高齢者やひきこもりの人、出所者にも広げる。こうすることで「約5000万人の就労支援につながる」と話す。さらに有機農産物をつくることで、農薬や化学物質が引き起こす課題の解決にも向かう。 農福連携と有機農業の二輪で社会性と経済性を両立する。この二輪がうまく動けば、課題解決をしながら、かつ利益を生み出し・課題を生み出さない農業が実現するわけだ。 山梨県北杜市で有機JAS認証を取得した農業を展開するファーマン(山梨県)の井上能孝社長は「農福連携などが絵に描いた餅にならないよう、ビジネスも重視している。儲けなくして、事業も社会も持続性はない」と強調する。 同社は事業活動のなかで農業と何かをかけ合わせる「農業×X」の取り組みを進める。そのひとつに「農業×『お任せしよう』」と掲げて、農福連携に取り組んでいる。 そのうえで井上社長は「その利益を次世代や社会への包摂性、環境性などへの投資に使っていくことで、持続する仕組みをつくっていける」と話した。 農林水産省農福連携推進室の渡邉桃代室長は、「農福連携は、昭和に障がい者の就労支援から始まり、いまでは対象が広がった。障がい者や生活に困窮している人、引きこもりの人や元受刑者などが活躍する場をみんなでつくっていこうと進化してきた」と紹介した。 そのうえで「大量生産・大量消費からサステナビリティの時代に変わるなかで、農業は食を通じて社会と人類を次世代につなげていく役割がある。そこにいろんな人が関わることが、ダイバーシティ社会がつくっていくきっかけになるのでは」と指摘した。