新興食中毒の原因菌を2時間で迅速検出、大阪公立大が手法確立 早期の救命に道
そこで山﨑教授は、まずE.アルバーティーがキシロースなどの糖を分解せず、無色のコロニーを形成する特徴に着目し、同菌と他の大腸菌を見分けられる寒天培地を作った。その一方でPCR法に改良を重ね、電気泳動ではなく蛍光物質によって「見える化」するリアルタイムPCR法を確立した。寒天培地による培養と新PCR法を組み合わせ、約2時間で特定が可能になった。さらに、新PCR法では菌の数が10個でも検出できる高感度になったという。
水島中央病院の外来患者に協力を仰ぎ、症状が消えたあとでも新PCR法で追跡調査のための検便を行ったところ、症状がなくなった発症35日後でも菌を検出できた。つまり、症状が治まった後でも他の患者にうつす可能性が否定できないことが分かった。山﨑教授は「今回の手法を応用すれば、不顕性(保菌しているが発症していない)の患者を検出するのにも役立つ」と語る。
今回は有症状の患者の便中の菌検出法について研究したが、今後は不顕性の患者の検出法について検討すると共に、食中毒の原因となる物質を特定できるような食品別の寒天培地の開発を続けたいという。
山﨑教授は「食品には多種多様な菌が付着しているため、食中毒の原因菌を特定するのは非常に難しい。肉用、野菜用、魚用といった食品分類ごとの培地を作りたい。E.アルバーティーの過去の集団感染例を見ると、水が関与しているのではないかと考えている。今後は、同菌の発生原因や自然界での動態についても調べたい」と話している。
研究は日本学術振興会の科学研究費助成事業などにより行った。E.アルバーティーの株は熊本県保健環境科学研究所(熊本県宇土市)などからも提供を受けた。成果は米科学誌「ヘリヨン」電子版に4月26日に掲載され、5月2日に大阪公立大学が発表した。
◇5月29日追記 本文の一部を訂正しました。 6段落目) 誤「乳糖の一部を分解して酸を出す特徴」 正「キシロースなどの糖を分解せず、無色のコロニーを形成する特徴」