日本の1人あたりGDPが韓国に追いつかれるって本当?
日本の1人あたりGDP(国内総生産)が5年後、韓国に追いつかれる――。こんな推計が先月ニュースになりました。韓国経済はといえば、ひところの絶好調期は終わり、陰りが見えてきているといわれます。1人あたりGDPが本当に追いつかれることはあり得るのか。マクロ経済が専門の岡山大学准教授、釣雅雄氏が解説します。 【写真】ナッツリターン問題で批判集まる「韓国財閥」の強さと弱さ
1人あたり名目GDPを比較する
韓国の1人あたり名目GDP(ドル)が、2020年には日本とほぼ同じになるという結果が、IMFの推計(World Economic Outlook Databases (October 06, 2015))に出ており、驚きをもって報道されているようです。統計を見ると、実は、将来というだけでなく、現時点(2015年)でも違いは2割未満で、ほぼ同一といえるものになっています。 GDPの規模は人口が多いほど大きくなるので、国の経済水準、すなわち豊かさを比較するには、人口で割った1人あたりGDPを用いるのが適切です。その1人あたりGDPが同じということは、韓国と日本の経済・生活水準がほぼ同一になったとみなされます。日本経済が韓国に追い抜かれるという状況が、目前に迫っているという印象の動きにもなっています。 それだけではありません。次の図「1人あたり名目GDP(PPP)」にあるように、購買力平価(PPP)では、2018年に韓国が日本を上回っています。購買力平価に基づくGDPは、為替レートでドル換算するのではなく、物価の違い(比率)で計算したものです。そのため、生活実感に近い比較ができます。実際の生活については、韓国のほうがもうすぐ日本を上回る水準となることを意味しています。 ただし、韓国と比較した報道がされているものの、特別に韓国経済が日本経済を上回る成長をしているというわけではありません。日本と他の国と比較しても同じことが言えます。 先ほどの1人あたり名目GDPの図には、シンガポール、台湾、英国、米国を加えています。ここから、日本だけが、特に2013年頃から落ち込んでいることがわかります。たまたま、韓国経済が日本に追いつくような位置にあったので比較しやすいのですが、特別に韓国との違いが重要というわけではありません。