サッカー元日本代表・岡崎慎司が語る 引退しても「雑草魂で頑張ります!」
サッカー元日本代表の岡崎慎司(38)が現役生活に終止符を打った。″岡ちゃん″の愛称で親しまれる愛されキャラの一方で、日本代表歴代3位の50得点、出場試合数同4位の実績を残した名ストライカーは今後、どんな勝負を仕掛けて行くのか。単独インタビューで話を聞いた。 【画像】色紙には"挑戦"の文字 引退会見で決意を新たにした「岡崎慎司」 この取材に先立ち6月17日には引退会見を行っていた岡崎。参考がてら長谷部誠(40)の会見をチェックしたと明かす。 「どんな話をするのかな?と思って観ましたけど、そもそも持ち時間がまったく違って。どんだけしゃべんねんハセベ!って思いました(笑)」 長谷部の会見が自身の約2倍の1時間半に及んだことを引き合いに出し、笑いを誘った。 引退後、岡崎はドイツ6部『バサラ・マインツ』の監督に就任した。同時にプロの監督資格を得るための講習を受講し、ラ・リーガや現役最後に所属したベルギー1部『シント=トロイデン』のアンバサダーにも就任するなど奔走している。 「忙しくて引退した時の気持ちとか忘れかけていて。今、また挨拶まわりとかするなかで、もう一回あの時の気持ちに戻してるんです」 岡崎が話すと忙しさも楽しげに響く。 引退会見では「将来は日本代表の監督となりW杯優勝を目指す」とぶち上げ、話題になった。改めてその真意を聞いた。 「日本代表監督を目指す発言もしましたけど、自分はこれからも選手時代と同じメンタルでいたかったんです。勝負の感覚を味わっていたい。そう考えると監督として戦うしかないなと。で、選手の時とまったく一緒なんですけど、ヨーロッパで活躍できる指導者になってからでないと代表の監督になったとしてもW杯は優勝できないと思うんですよ。だからヨーロッパでキャリアを始めるんです」 しかし道のりは長い。欧州トップチームで指揮を執るには専用のライセンスが必要となり、取得には年単位の時間がかかる。欧州での監督としての実績も必要だ。だからこそ岡崎がドイツのクラブで指導の現場を手に入れた価値は大きい。 「自分は夢を語るだけで、周囲の仲間が『バサラ』を今のような形にしてくれた。引退後、最初からヨーロッパで監督ができるのは本当にありがたいことです」 今後は『バサラ・マインツ』で指導をするだけでなく、系列グループが運営する関西1部『バサラ兵庫』から、海外挑戦の機会を選手に提供できるよう、両クラブを育てていきたいという。 「まずは『バサラ・マインツ』をドイツ4部くらいに上げて、『バサラ兵庫』をJ3にというのが5~10年の目標。そうしたら必然的に若い選手が海外挑戦する流れができるから」 ◆ダイビングヘッドは教えない 自分が欧州における日本人の新たな海外挑戦の「拠点」となることを夢見る。”監督岡崎”として、求める選手像には自身の経験が投影されている。 「競争の中で結果を出せるまで頑張れる人間、我慢できる人間、逃げない人間。そういう人でないと海外では通用しない。それを日本にも伝えていけたら」 世界で勝つにはその姿勢こそが必要だと考えている。ただ厳しい言葉が続く一方で、代名詞だったあのプレーにはこだわらないという。 「ダイビングヘッドは教えないと思います(笑)。今、ヘディングはあんまり身体によくないって言われてるので。でも、フィジカル、技術、メンタルのベースは作らせないといけないと思う」 岡崎が自らのクラブで指導の場を手に入れた一方で、同時期に引退した長谷部はドイツ1部『フランクフルト』というビッグクラブの育成組織から同じくプロの監督を目指す、いわば正反対のアプローチを取る。 「自分は現役時代も刺激を求めていろんな国に行くなど、常に環境を変えたいと思うタイプでした。新しい道を自分で切り開きたいんです。ハセさんは真逆で、ちゃんとした道のあるところから監督を目指す。この二つのパターンが、今後海外で選手を辞めて監督を目指す人の選択肢になっていく気がしますね」 ビジョンは明確だが、一筋縄ではいかないことは理解している。 「計画通りにはいかないのは、これまでのサッカー人生でわかってるんで、そんなんも楽しみだなって感じですね。自分がどうなっていくのかって。道が見えないほうがワクワクしますので。これからも”雑草魂”で頑張ります」 引退してアルコールを嗜む機会が増えたという岡崎。「相手次第でワインでもハイボールでもなんでも飲みますよ」と口にした。環境は変わったが、挑戦し続ける姿勢だけは変えず、岡崎はまた未来に向けて全力疾走する。 『FRIDAY』2024年7月19日号より 取材・文:了戒美子(スポーツライター)
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