住民の「目」と防犯理論を駆使した、治安向上を図る地域ぐるみのチャレンジ #こどもをまもる
副会長の矢萩隆治さんも「最近はマンションが建ったりして、町内の景色も明るくなってきているのですが、やっぱり暗いところや周りから見えにくい場所というのは危ないですね」とうなずく。 同じく副会長で防災士の初山一美さんは「町会の掲示板で古いものを貼り付けたままだと、見回っていないのでは? と思われます。新しいものに貼り替えて頻繁に見回っている姿勢を示すのが大事です」と力を込める。
場所もふれあいも守り続けるために
場所に対する警戒強化と同様に、重きをおいてきたのは地域住民との交流だ。毎年6月に開かれる祭りでは祭礼の準備から露店や神輿まで全般を運営していた。丁官さんは、ふれあいは防犯上でも大事だと語る。 「(寺七西町会の)青年会が出した金魚釣りや焼きそば屋台は子どもたちに大人気でした。ですがコロナ禍のため、ここ2~3年は出せませんでした。今年の2月には登校時の子どもたちに挨拶をする声かけ週間もありました。声かけでは子どもたちに顔を覚えてもらうことも大切です。知らないおじさんから『ここは危ないよ』と言われるのと、顔を知っているおじさんから言われるのとでは違います」 ふれあい減少の要因はコロナ禍だけではない。向島警察署管内の防犯協会から要請を受けて実施した歳末夜回りでは一部から苦情も寄せられた。 「20年前は22時ぐらいまで拍子木を持って見回りをしても苦情が出ない時代でした。戸建てが減りマンションが増えるにつれて、地域への関心が薄れ、町会に関わりたくないという人が増えました」
だが、そんな時代だからこそ見回りには力を入れ、自分たちの世代で終わらせたくはないという気持ちは強い。 「若い人たちに町会の役員になってもらうのが一番いいんですけど、ハードルが高い。火の用心のとき一緒に回ってもらうとか、お祭りのときに手伝ってもらうとか、そういうところから入っていただけないか。町会の役員も高齢化していますからなんとかしていかないと」 若い世代の地域参加は防犯上も欠かせない。隣の住人の顔も名前も知らないことが珍しくない現代。良かれと思って子どもたちに挨拶をしても「声かけ事案」になりかねない。自分たちが住む地域に、子どもたちの安全を守ることを強く意識する大人たちがいれば、どんなに心強いことだろうか。 町で40年剣道を教える初山さんは言う。 「子どもが町を歩いていて『先生』と声をかけてくれる。いま子どもでも怒れない時代だけど、知ってる大人がパトロールしてるんだと思ったら子どももおかしなことはできないでしょう? 地域のコミュニケーションはムラみたいにうっとうしいだろうけども、何をしてるかぐらいは見守らせてほしいですね」