2度の引退を経て再び代表へ。Wリーグ・吉田亜沙美が伝えたい「続けること」の意味「体が壊れるまで現役で競技を」
高校卒業後に、女子選手の競技登録者数が激減してしまう――女子スポーツ特有の課題を抱える競技の一つがバスケットボールだ。スポーツ用品を手がける株式会社モルテンは、「KeepPlaying」プロジェクトを通じてサポートの輪を広げている。2月上旬にハンガリーで行われたFIBA女子オリンピック世界最終予選で、日本は強豪のスペインとカナダを破り、3大会連続のオリンピック出場を決めた。最年長選手としてチームの精神的主柱となった吉田亜沙美選手は、キャリアで2度の引退と復帰を経験。そして36歳の今、「体が壊れるまで現役続行」を宣言する。最前線で戦い続けてきたキャリアの転機と、競技生活を離れて過ごした「大切な時間」について話を聞いた。 (構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]、写真提供=Wリーグ)
パリ五輪への切符を獲得「チームワークは世界一」
――吉田選手はバスケットボール女子日本代表の一員として、2月上旬にハンガリーで行われた「FIBA女子オリンピック世界最終予選」でパリ五輪出場権を獲得されました。改めて、厳しい予選を勝ち抜いた思いを教えていただけますか? 吉田:決して楽な戦いではなく、一戦一戦が本当に苦しいゲームでした。その中で日本の強みや良さを出し切った結果だったと思いますし、何より私自身、代表で仲間とバスケットができてすごく楽しかったです。今回の予選に出場したのは12名でしたけど、残らなかったメンバーの分まで戦って、オリンピックの切符を勝ち取れたことは非常に嬉しかったです。 ――吉田選手自身は、チームの強さをどんなふうに感じていましたか? 吉田:「走り勝つシューター軍団」というコンセプトの通り、どのプレーに関しても走り勝つことを意識しましたし、ビッグマンも走れるチームだったので、そこは今大会のチームの魅力だったと思います。1番(ポイントガード)から5番(センター)まですべてのポジションの選手がスリーポイントシュートを打つことができて、2番(シューティングガード)、3番(スモールフォワード)は切り込んでいける選手とシュートに特化した選手がいて、ビッグマンもスリーポイントを打てるから、相手のディフェンスを外に引き出してドライブもできるので、どこからでも攻めることができる。その上で、選手たちがアイデアを出し合って戦うことができていましたし、チームワークは世界一のものがあると自信を持って言えます。 ――吉田選手の振る舞いやリーダーシップもチームに落ち着きを与えていたと思います。 吉田:私はポイントガードで、ゲームメイクの部分はもちろんですが、チームの戦い方や、「ここが大事」という時間帯を考えなければいけないポジションです。以前は代表でもスタートで出ていたのですが、今は控えなので、メインガードをどれだけ長い時間休ませるかを考えながら、チームをまとめる役割にフォーカスできたことはありがたかったです。短期決戦では精神面も非常に重要ですし、大事な試合であることはもちろんみんながわかっていると思いますけど、より引き締めるという意味で、声がけや試合中の立ち振る舞いなどの面でサポートを意識していました。 ――個性際立つ選手たちが多い中で、吉田選手のピンクのベリーショートヘアーが一際目立っていました。これまでも青や白などいろいろなヘアカラーやスタイルにチャレンジしてこられましたが、今回のヘアスタイルにはどのような思いを込められていたのですか? 吉田:どこかで目立ちたいなと思ったときに、今はプレーではなかなか目立つことができないので、髪やシューズで目立つことはもともと意識してやってきました。ベリーショートにしたのは、気持ちの部分で気合いを入れる意味があったのですが、Wリーグの開幕戦のときにピンクと青と迷って、そのときはチームカラーである青にしていたので、代表のときはピンクにしてみました。