「保育士」の配置数、国の調査結果「9割改善」は実態と乖離? 保育士らの団体が“基準引き上げ”へのロードマップ策定求める
「しっかりと実態把握し、確実に配置改善進めて」
ではなぜ、実際にこのような乖離が発生したのだろうか。岩狹さんは子ども家庭庁の集計方法を疑問視した。 「子ども家庭庁の調査では、『園全体』で保育士の数が新基準を満たしているかどうかで、改善が行われたのかを計算、判定しています。 しかし、3歳児以上をみる保育士の数が改善していなくても、たとえば1歳児の配置改善が行われた施設では、新基準を満たしたと判定されるケースもあります。 6月の国会答弁で、加藤鮎子こども政策担当相(当時)は『基準改正の効果については調査結果を踏まえつつ見極めたい』と述べていましたが、この調査では3歳児以上の改善状況が反映されておらず、問題があるのではないでしょうか。 たしかに、自治体や施設によっては独自に1歳児の保育士の配置改善を実施しているところがあります。 その理由のひとつとして、2018年から2024年までの7年間で発生した重大な誤嚥(窒息)事故のうち、1歳児による事故が約6割を占めていたことや、そうした事故が起きた際に、自治体の検証報告書で、保育士配置基準の改善が提言されたということが理由としてあげられます。 ですが、1歳児の配置改善のための、自治体や保育現場による独自の努力が、3歳児以上の配置改善と合わせて一体として把握されてしまえば、基準改定の効果を正確に見極められないのではないでしょうか。 なぜこのような調査を、子ども家庭庁として実施したのか非常に理解に苦しむところです。 われわれとしては、しっかりと3歳児以上のみを対象とした正確な実態把握をしていただき、確実に配置改善を進めるよう、対策を採っていただきたいと思います」(岩狹さん)
「国はロードマップ策定し、基準引き上げを」
そのうえで、正確な実態の把握とともに、岩狹さんはさらなる状況改善についても訴えた。 「OECD(経済協力開発機構)の保育に関する国際比較調査では、日本に対する政策提言として3歳以上児童のクラス規模の縮減が提言されていました。 また、昨年われわれが実施した、別のアンケートでは保護者に対し安心できる保育士の配置数を聞いたところ、0歳児から5歳児までのすべての年齢層で、国の基準の約2倍の人数が求められているという結果になりました。 現在の配置基準から、こうした世界水準や、保護者の求める水準への引き上げを実現するため、明確なロードマップを国が策定し、質の高い保育の確保・充実を図っていただきたいというのが、われわれの要望です」