土屋アンナさん母娘鼎談「繊細な人はロックンロール!?」|作家LiLy対談連載「生きるセンス」
自分の弱さを見つめないと人の心の機微を書くことはできない――土屋アンナさん
LiLyさん(以下、L):今から約20年ほど前、私と出会った頃のアンナはすごく警戒心が強かったよね。 土屋アンナさん(以下、A):そう、私、実は人付き合いがすっごく苦手で。テレビとかでは、誰とでもすぐ仲良くなるイメージがあるかもしれないけれど、それは実像とは違う。若い頃からいろんな人が寄ってきたから、「友達って何?」って考え始めたらよくわからなくなって。それで苦手意識が芽生えたのかもしれない。 L:そんな警戒オーラをあえて無視して入っていったのが、私(笑)。 A:うん(笑)。LiLyは、私のなかに存在しない言葉の組み合わせを使って、「アンナは○○だからすっごく素敵」などと言って、嬉しい気づきをたくさんくれた。そこに嘘がないのがよくわかったから、どんどん心の距離が縮まっていったの。 L:ほんと? 嬉しい! A:ワードのセンスがあって、勢いもあって、ああ、この子はすごく強い子だなって思った。でも著書を読むと、同時に繊細な人だということもわかった。人の弱いところを丁寧に書けるのは、どちらも備えていないとできないことだから。LiLyはLiLyで、こう見えて実はガラスのハートの持ち主。だから、逆に言葉の鎧がすごいんだとも思う。 L:わぁ、そうだね。言い当ててる! A:うん、私自身が人一倍“気にしい”だからよくわかるんだよね。たとえば食事の席で「あれ? 今お箸を置いたけど、何か怒らせちゃったかな?」なんて余計なことまで考えちゃうタイプだからさ。 L:アンナのそういうところ、まさにフラジャイル。でもさ、だからこそロックが好きなんじゃない? A:え? フラジャイルだからこそロック!?
繊細ゆえに秘めたパワーをもっている人は多いと思う――LiLyさん
L:そう。前回話したとおり、母もすごく“気にしい”ですごく繊細。でもだからこそ気性も激しいの。私が小さいときは特に夫婦げんかがすごくて、あれは家中がロックンロールだったなぁ。繊細ってつまり感じやすいってことだから怒りが爆発したときのパワーも強いし、ロックにシンパシーを感じるのでは? 私のこの見立て、お母さんはどう思う? 由美子さん(以下、Y):確かにそうかもしれないわね。私自身が聴いてきた音楽はクラシックだったけれど、アンナちゃんのライブに行って、あらためてロックに触れたとき、「これ、すごくいい!」って魂が震えたもの。 L:うんうん。クラシックベースのロックってところもアンナにそっくり。 Y:そういえばその昔、占いに連れて行かれたことがあって「あなたは複雑怪奇。本当の思いが表現できていない」って言われたの。今思えば繊細ゆえの秘めたパワーをもて余していて、いい子を演じているところはあったのかもしれない。 A:由美子さんと私、どこか似ている気がしてきた! L:そう。お母さんは本来、アンナみたいなパワーを備えている人だと思うよ。 土屋眞弓さん(以下、M):ちなみに私はアンナや由美子さんと真逆で、繊細さより、強さが先に立つタイプ。2歳違いで娘を産んだとき、まず「この命を守り育てないといけない」と感じたわ。我が子の誕生により、より強くなろうと決心したし、実際そうでないと生きていけなかった。 L:私は眞弓さんにすごくシンパシーを感じます。私も小さな頃から「強い」と言われてきたし、そこにさっきアンナが言っていた“言葉の鎧”が年々完成度を高めてきているし、小説を書くことで“客観視”が板についちゃって、もうなかなか“傷つく”までは到達しないの。これは良くも悪くも、だよ。 M:おそらく4人それぞれに強いし、それぞれに繊細なのかもしれないわね。 Y:強さはひとつじゃない。いろんな強さがあるということが4人で話すとよくわかるわね。 土屋アンナ モデル、女優、歌手、タレント。日本アカデミー賞新人賞 ・助演女優賞ほか受賞歴多数。歌手として多数のアーティストとのコラボレーションやオリジナル楽曲提供ほか、フェスへのゲスト参加など世界を舞台に活動中。 LiLy 作家。1981年生まれ。神奈川県出身。N.Y.、フロリダでの海外生活を経て上智大学卒。25歳でデビューして以来、女性心理と時代を鋭く描き出す作風に定評がある。著書多数。今年ベッド内美容ブランド「Bedin」をローンチ。