考察『光る君へ』9話 友を埋葬するまひろ(吉高由里子)と道長(柄本佑)の表情…「ソウルメイト」とはこんな残酷な意味だったのか
お前はあの時の!
散楽の宿に踏み込んでくる検非違使。まひろと乙丸(矢部太郎)をしょっぴいていったのは、第2話のラストから第3話の冒頭で道長を捕らえ、そして第7話で散楽の上演妨害時にまひろを捕まえようとしていた放免(検非違使の下部)たちである。第7話ではまひろに掴みかかる際「お前はあの時の」と叫んでいた。辻で直秀たちの周りにいて顔を覚えられているので、仲間だと思われても無理はない。 そして、道長から検非違使への心づけ……「解き放ってやってくれ」「手荒なことはしないでくれ」。これがどう受け取られたのかはわからない。が、通常とは違う対応を求められる業務は、現場で働く人間にとって面倒で厄介なことには違いないのだ。今も昔も。
まひろは薄々気づいている
検非違使から救い出したまひろを道長が伴うのは、いつもの六条の荒れ屋敷。ここはすっかり、ふたりの秘密の場所になった。 道長「信用できるものは誰もおらぬ。親兄弟でも」「まひろと直秀は信じている」 いい場面だが、一瞬、……待って。百舌彦(本多力)も入れてあげてください!と思ったことを告白しておく。百舌彦は共にいるのが当たり前だから、信じる信じないではない存在なのだろう。 この場面で静かに、時にやや大きく風の音がする。この作品は、自然の音が効果的だ。 第8話、まひろの琵琶の演奏にあわせて、呼吸のように風の音がした。音楽と共に、各話で風や虫の音、鳥の声がどのような効果をもたらしていているのか。これからも耳を傾けたい。 「三郎でよい」 「もう三郎とは呼べないわ」 不満そうな道長だが、まひろはとうに身をもって知っている。上流貴族である道長と自分の間に、どうしても越えられない身分の差があることを。 「うちは土御門殿の近くなので……あのお屋敷の方に見られたら、色々と言われるので」 右大臣家と左大臣家がライバルである、姫君サロンできゃあきゃあ言われるというほかに、倫子の道長への恋心を、おそらくまひろは薄々気づいているのだ。 「何を言われるというのだ」 当然、道長はまだそのことを知らない。