〈食べログ3.5以下のうまい店〉名店出身のシェフとソムリエのW主演を果たす大阪フレンチの新鋭
また、ミ・キュイ(半生)の赤海老が放つピュアな甘みが、味わいに奥行きをもたらし、レーズンの質朴な甘みや、松の実の香ばしさがいいアクセントに。 皿の底に忍ばせている、爽やかな味わいのクリームはフロマージュブラン?と梅谷シェフに尋ねると、「実はカリフラワーのクリームなんです。カリフラワーと牛乳、少しのカレー粉と唐辛子を加えたものをクリームにしています」とのこと。 確かに、気づくか気づかない程度のスパイス感が広がり、食べ進むほどに感じる起伏が心地よい。 「当たり前のことですがコンソメのブイヨンをとる際、鍋につきっきりでアクをひきます。絶対に濁らさず、とことん澄みきった状態に」と梅谷シェフは真剣なまなざし。「ヴァリエの高井 実シェフの下で働き始めたのが29歳の時。いい意味で、常識を覆される毎日でしたし、高井シェフから学んだフランス料理のテクニックは今もなお、実践し続けています」と言って微笑む。 船井さん「黄金色をしたコンソメジュレの美しさたるや! 盛り付けの美しさはもちろん、一口味わえばハッと瞠目します。」
ソースの精度の高さがうかがえる「黒毛和牛ネックの赤ワイン煮」
梅谷シェフが「常識を覆される毎日」と話す修業時代のエピソードは、メイン料理「黒毛和牛ネックの赤ワイン煮」に見て取れる。 じっくり煮込んだ牛ネックは、程よい繊維質とねっとりとしたゼラチン感が印象的。艶やかな赤ワインソースの澄んだうまみに、丁寧にとったフォン・ド・ボーの凄みが潜む。
「ソースは、深みはあるけれど“フレッシュ”であること。つまり、煮詰めすぎず手前で止め、最終の仕上げで完成させるイメージです。修業時代、高井シェフから教わった技の一つです」と当時を懐かしむ。 「高井シェフは、今も気にかけてくださいます。お肉屋さんなどヴァリエと同じ仕入れ先も多いですし、仕入れ先の方々も親身に相談に乗ってくださるのが本当にありがたいです」 お二人は、釣り仲間でもあるらしい。揺るぎのない師弟関係、そのエピソードを聞いているだけで胸が熱くなる。 船井さん「「黒毛和牛ネックの赤ワイン煮」は、味に厚みがあるのですが、重すぎない品の良さが魅力です。今回登場する、シックでいてモダンな器は“美濃焼”。光の加減で絶妙に変化する、皿の風合いも楽しんでください。」