トヨタとヒョンデが「民間外交」 クルマ好きTOPの交流で何が見えた? 協業もある得る? 「水素はアジアから」は実現するのか
トヨタとヒョンデが「民間外交」 その意図は?
「ラリージャパンに向けた盛り上がり」と「韓国のモータースポーツの発展とファン拡大」を目的に、韓国のエバーランドスピードウェイで行なわれたトヨタとヒョンデのコラボレーションイベント「Hyundai N x TOYOTA GAZOO Racing FESTIVAL」から約1週間が経過。 すでに国内外の様々なメディアで記事が掲載されていますが、メーカーの“垣根”を超えたタッグは、とても好意的に捉えられているようです。 【画像】これがトヨタとヒョンデのイベントです(9枚)
日本と韓国の関係は1990年頃から貿易や政治の面で対立が起きているのも事実ですが、今回のイベントはまさに“クルマ”と言う共通言語を活かした“民間外交”的な側面もあったのではないかと、筆者(山本シンヤ)は分析しています。 そんなトヨタとヒョンデですが、実は多くの共通点があります。代表的なモノをあげてみると、こんな感じです。 (1)フルラインメーカー (2)マルチパスウェイを唱える (3)モータースポーツを市販車づくりに活かす (4)トップがクルマ大好き、モータースポーツ大好き 今回のイベント開催のキッカケは(4)の要素が大きいです。この話の発端はチョン会長が2024年初頭に来日でした。 元々はトヨタ博物館などの視察が目的だったようですが、お互い3代目でクルマ好き・モータースポーツ好きと言うことで、屈託ない会話をしている中で「競争は大事だけど、協調するところは協調しよう」とイベントの話になったそうです。その目的はズバリ「アジアのクルマ好きをもっと増やしたい」です。 実はこの話には筆者しから知らないプロローグがあります。実は昨年のWRCジャパンにヒョンデのチャン・ジェフンCEOが来日。メディアとの懇親の場で、同業の先輩へ「ミスター豊田に会うにはどうしたらいいか?」と聞かれたそうです。 返答に困った先輩が筆者に連絡、その時に僕は「モータースポーツの場、ピットやパドックでバッタリ会うのが1番だと思いますよ」と伝えました。この時、章男会長は体調を崩していたので会うタイミングはなく。 次は今年1月の東京オートサロンでした。ヒョンデは初出展でしたが、筆者はNブランドのキーマンの1人であるパク・ジュン氏のインタビューでブースを訪れていました。パク氏は「アキオさんは僕のヒーローです」と教えてくれました。 実はその僅か10m先で章男会長はトヨタイムズの撮影中で、近くにいながらも残念ながら会えず。 実はその翌日にもチャンスがありました。屋外のイベントスケジュールがヒョンデ→トヨタの順番で、「ここで会えたら最高!」と期待したものの、何とパク氏が緊急の打ち合わせで会場を離れてしまい、ここでも会えず。 このように何度か接点が生まれそうなチャンスがありましたが、繋がりそうで繋がらない事に筆者はモヤモヤ。ただ、その後トヨタ関係者から、「2月にヒョンデの副社長(元会長秘書)が来日。章男会長が産業記念会館を案内。ここで副社長が『チョン会長が会いたいと言っている』とお伝えした所、豊田氏は『ラリージャパンに来て』とお誘いしました」と。それが結果として、チョン会長の来日に繋がったのは言うまでもないでしょう。 筆者はそんなやり取りを知っているからこそ、今回のイベントの開催は「本当に実現しちゃった!」と言う驚きと共に、他の誰よりも感慨深く感じていました。