トヨタとヒョンデが「民間外交」 クルマ好きTOPの交流で何が見えた? 協業もあり得る? 「水素はアジアから」は実現するのか
ちなみにイベント前の朝礼で章男会長はトヨタの関係者全員にこのように語りました。 「今回のミッションはここに来ている全ての人を“笑顔”にすること。そして、できたら“クルマ好き”にすること。このミッションを可能にするためには何をしてもいいです。責任は全部僕が取ります。とにかく何をやってもいいので、以上!!」 これは、まさに章男会長が常日頃から語る「自分以外の誰かのために」の国際的な実践編と言うわけです。 ちなみにこのイベントはトヨタとヒョンデの共同開催ではあるものの、トヨタの役目は約70%のシェアを持つヒョンデに対して、「アウェイ(トヨタ/レクサス含めて1.2%のシェア)である韓国でモータースポーツ盛り上げをサポートすることで、『クルマ好き連合』を作りたい」と言う想いが強かったと思っています。 そんなイベントは両社のWRCチームを中心とした迫力ある走行パフォーマンスとファン参加型プログラムなどが実施されましたが、やはり注目はやはりオープニングでした。 章男会長がドライブするヤリスWRCにチョン会長が乗り、得意のドーナツターンを含むパフォーマンスを3000人の観客、国内外300人以上のメディアの前で披露しました。日本のメディアにとっては何度も見る光景ですが、韓国メディア、そして韓国の観客にとっては初めての出来事で驚きの声と拍手に包まれました。 実はその直前、マシンに両会長が乗る時のパドックは2ショット狙いのメディアが殺到し、「押すな、押すな」で辺りは一触即発状態。逆を言えば、それくらいの両会長の競演は“大ニュース”だったと言えるでしょう 。 パフォーマンスの後、ステージに登壇した両会長は笑顔で握手を交わしました。最初はいつも通りの章男会長に対して、ややクールなチョン会長でしたが、章男会長の感謝の言葉とポーズを含めた「サランヘヨ(韓国語で「愛しています」の意味)」のパフォーマンスの効果か、途中から満面の笑み。そして、2人はこのように語りました。 「トヨタとヒョンデが一緒に手を取り合って、よりよい社会、そしてモビリティの未来をつくっていきたいと思います(章男会長)」 「私たちがモータースポーツに対する共通の情熱を見出し、このイベントを開催できたことを大変嬉しく思います(チョン会長)」 個人的には章男会長の真骨頂とも言えるファンに更に喜んでもらうためのアドリブ(=例えば、ヒョンデNのモデルに乗りパフォーマンスを見せるなど)が見られなかったのは少々残念でした。この辺りは恐らくキッチリと台本通りに進めたいヒョンデ側に気を使ったんだろうなと。ただ、今回は初めての試みだったので、2, 3回と進めていくにつれて色々と変わってくるでしょう。 イベント終了後、章男会長はメディアに対してこのようにコメントしました。 「今回のイベントを開催するにあたり、1番はじめに『ありがとう』を韓国の皆さまにお伝えしたいです。普段は競い合っているライバル同士が、クルマの未来づくりに向けて手を組み、『クルマ好き連合』を作ることができました。そういう意味では歴史的なイベントだったと思っています。ラリージャパンは両チームの選手たちが素晴らしい走りを披露してくれるはずなので、是非とも応援していただきたいと思います」 国も文化も考えも異なる2社による共同イベント、恐らく運営面では色々な反省点や課題があったかもしれませんが、総合的に見ると「大成功」と言っていいでしょう。