観光庁、関係人口拡大へ「いくたび」をアピール、「第2のふるさとづくり」事業の一環で、5つの事例を紹介
観光庁は、2021年10月に発足した「第2のふるさとづくりプロジェクト」の一環として、一般消費者向けに各地域の取り組みを「いくたび」として訴求開始した。コンセプトは「行くたびに新しい発見、行くたびに親しいものが増え、行くたびに、まちが、人が、元気になっていく」。地域の人とのつながりを深めることで、交流人口や関係人口、二地域居住の増加を目指すものだ。 2022年度は19地域、2023年度は18地域でモデル実証事業を実施。2024年度も12地域で継続的かつ多頻度での来訪を促す取り組みを実施している。 観光庁は、9月に開催された「ツーリズムEXPOジャパン」で「第2のふるさとづくりプロジェクト」ブースを初出展。一般日には「いくたび」の特別ステージイベントを開催し、5地域での取り組みを紹介した。それぞれの概要は以下のとおり。 ▼福島市フルーツラインエリア観光推進協議会 同協議会は、福島市の阿武隈川沿いの信達地方を中心に、地域に根付く「養蚕」と「織物」の特性を活かし、地場産業の継承や交流人口の受け入れの仕組みづくりを進めている。 その中で、来訪目標頻度に合わせてプランを造成。たとえば、首都圏の郊外在住の40~60代を来訪目標頻度4回以上、ファッション関係者を3回以上、都内・近郊タワーマンション在住者を2回以上と定める。また、今年11月には再来訪イベントも開催。再来訪の機会を創出する。さらに、2025年1月にかけては、文化振興活動として「ふくしま絹の道ワークショップ」を開催する。 ▼岳温泉観光協会 福島県の岳温泉では、岳温泉から安達太良山などの「登山」を「山旅」と再定義。「山岳ガイド」を「山旅サポート」として、ガイド業ではなく、旅のトータルコーディネーターとして位置付けている。 その中で、「山旅を楽しむ」から「山旅環境を守る」へ、マインドをシフトさせ、活用と保全が一体となったコミュニティを形成することで、山旅サポーターの育成や交流人口の促進を推進。その先に、多様な山旅スタイルとして、通い旅、週末滞在、移住・定住に期待をかける。 ▼雪国観光圏/じゃらんリサーチセンター 雪国観光圏とじゃらんリサーチセンターは共同で、「帰る旅研究会」を立ち上げ、新潟県を中心に複数のプログラムを展開している。コンセプトは「ただいま」「おかえり」で始まる旅。移住・二拠点居住の一歩手前を想定している。 宿泊施設で、5時間のお手伝いをすると宿泊費が免除となる「さかとケ」プログラムを運営。現在、5拠点で受け入れをおこなっている。また、南魚沼の杉林の間伐材を利用してアロマオイルの商品化を進める「帰る森」もスタートしたほか、古民家再生計画に参加する「帰る旅スタディツアー」なども展開。2024年度は、新たなプログラムてして「帰る旅・地域クリエイターズCAMP2024」も開催する。 ▼富山県・ジソウラボ 富山県南砺市井波の事業者が中心となった団体「ジソウラボ」は、この地域で受け継がれてきた「土徳(どとく)」を中心に据え、「つくる人をつくる」プロジェクトとを進めている。「土徳」とは、民藝運動の提唱者である柳宗悦が唱えたもので、自然の恵みに感謝しつつ、隣人と協力しながら豊かな暮らしを築いていくこと。 地域の伝統産業である「井波彫刻」の後継者育成を目的として、2023 年から始まった「彫刻塾」を入口に、社会人や学生向けにさまざまなプログラムを用意。井波彫刻の技術紹介と作品制作体験、彫刻師や地域の人たちとの交流を通じて、第2のふるさとづくりを展開している。 ▼兵庫県・新温泉町 新温泉町は、人口が年々減少し、高齢化率も42%と兵庫県でワースト。地域課題に本気で取り組む「ヒト」を資源として、来訪者が課題解決に取り組み中で、来訪者同士のコミュニティを形成する仕掛けを進めている。 新温泉町に通いながら、地域課題に直面・解決に向けてチャレンジする人たちと行動し、自分なりの地域課題への関わり方を見つけたり、自分自身が興味が湧くテーマを見つけて活動するプロジェクト「ローカルクエスト新温泉町」を展開。アクセス改善のために、バスのサブスクプラン「新温泉町たんけんパス」の販売実証も進めている。
トラベルボイス編集部