脳科学者が発見した…仕事ができる人の「マルチタスク」が実は脳に与えている深刻な影響
単純作業の組み合わせなら効率的
実際には、効果的なマルチタスクは、たとえばおしゃべりしながら歩くなど、認知的な負荷が低い活動や自動化された単純作業に限られます。マルチタスクの典型例としてよく挙げられるのが料理です。パスタを茹でつつソースを作り、さらにはサラダを準備するその手際の良さは、見ていてうっとりするほどです。 また、街を歩く若者がスマホを見ながら音楽を聴き、ドリンクを手にしながらスムーズに歩いていく姿は、多くの人にとって迷惑かもしれませんが、実際には意外とマルチタスクをこなしているのです。あるいは、車の免許を取得したばかりの頃は、集中力が必要なため、おしゃべりしながらの運転は難しいものです。しかし、運転に慣れてくると、歌を歌いながらでも運転できるようになります。この脳の柔軟性にはいつも驚かされます。
結局は「一点集中」が効率的
しかし、脳が考えたり思い出したりする認知タスクを完全に同時に処理する能力には限界があります。そのため、多くの人がマルチタスクだと思っている行為は、実際には複数のタスク間を素早く切り替えることによって、同時に進行させているように見せかけているに過ぎません。 これをタスクスイッチングと呼びます。我々がマルチタスクをしていると思っているその時、実はただ単にタスクスイッチングを繰り返しているだけなのです。つまり、一つの作業から別の作業へと頻繁に切り替えているわけですが、これが意外と効率の悪い作業方法だったりするのです。 実際のところ、マルチタスクは誰にとっても精神的な負担が大きく、エラーを引き起こしやすくなり、ストレスの原因となることが多いのも事実です。 では、どうすればいいのか? 答えはシンプルです。「一点集中」です。一度に一つのタスクに集中することで、仕事の質も向上し、精神的な負担も軽減されます。時間管理においては、タスクリストを作成し、優先順位をつけ、一つ一つに専念する時間を設けることが効果的です。 マルチタスクがカッコいいとされる今日この頃ですが、本当に大切なのはタスクの「質」ではないでしょうか。それぞれのタスクに心を込めて取り組むことで、結果的により充実した結果を得られるはずです。 だからこそ、マルチタスクの神話に惑わされず、自分自身にとって最適な作業スタイルを見つけ出しましょう。そして時には、デジタルデバイスから離れて、自分自身のペースで物事に取り組むことの大切さを思い出してください。それが真の「超・集中」への道かもしれませんね。 後編記事【脳科学者が警鐘…スマートフォンで集中が途切れてしまったら、取り戻すには「23分間」かかる】」へ続きます。
毛内 拡