【密着】フィンランド 料理人から転身し、陶芸家として独創的なアートを生み出す息子へ届ける父の想い
繁盛していた店よりも、自宅でできる陶芸を選んだ理由のひとつが、子育て。収入は激減したが、それでもたまに作品が売れて、不自由なく暮らせるうちは思うままに生きようと夫婦で話し合ったという。 実は、利昌さんの父もやっとの思いで開業した美容院をすっぱりと閉店。そして心の病を抱え家から出られなくなった母を支えながら、利昌さんら2人の子どもを育てるため、時間の融通がきく仕事に転職したのだった。また、父と同じ美容師だったものの、理想の人生を歩めなかったであろう母からは「やりたいと思ったことをやってね」と言われているそうで、そんな言葉も利昌さんの背中を押してくれている。 今回初めて、現地での利昌さんの姿を見た父・重男さん。作品については「いいのかどうか、私はわかりません」と笑うが、かつて息子から流行っていた店を閉じると聞いたときには、「料理を続けてほしい」と伝えたという。しかし、「それは変えなかったですね」と意思が固かったことを明かす。
心惹かれた陶芸の世界に飛び込み感性で勝負する息子へ、父からの届け物は―
間もなく行われる展示会に出品を予定している利昌さん。釜入れしていた試作品が完成したというこの日は、仕上がりを確認することに。形も色あいも独創的な数々の陶器は「上に食べ物をのせる」ものだそう。「料理って普通、器かお皿で食べるんですけど、その概念すら壊しちゃおうかなと」。そして「今回はよかった」と出来上がりに満足する。 料理人としての成功を投げ打って心惹かれた陶芸の世界に飛び込み、類まれなる感性で勝負する息子へ、父からの届け物は30年前に両親が美容室で使っていた前掛けと、母が10代から愛用していたハサミ一式。父が大切に残していた仕事道具に、「僕も道具を使う仕事なんですけど、魂が入ってると思うんですよ。これで生きてきたという道具を託してもらったのは、見るだけで力がもらえます」と感激し、目頭を押さえる。そして「子どもの活躍が親の夢でもあると思うので、しっかりやっていきたいと思います」と、まっすぐに今の道を進むことを誓うのだった。 (読売テレビ「グッと!地球便」2024年8月4日放送)
読売テレビ「グッと!地球便」