なぜ浦和レッズDF槙野智章はSNS発信を続けているのか
新型コロナウイルスに対応する緊急事態宣言が、全都道府県を対象としたまま今月31日まで延長されることが4日、政府から正式に発表された。 予定通りに6日に緊急事態宣言が解除されれば、準備期間をへて6月13日にも再開する青写真が描かれていたJリーグの公式戦は、1カ月単位でタイミングを探っていく方針のもと、7月以降へと延期されることが必至となった。4月初旬から続く自宅待機がさらに延びる厳しい状況下で、浦和レッズのDF槙野智章(32)は持ち前のポジティブで明るい性格をフル稼働させながら前を向いている。 「サッカーをする環境づくりよりも家族や大切な人を守る、(新型コロナウイルスに)うつらない、うつさない環境づくりがまずは大事なので。(緊急事態宣言の)延長は致し方ない部分があるし、いろいろな欲求もあるなかで、落ち着くまでは我慢するしかないと思っています」 この日はレッズが主催する、オンライン会議アプリ『Zoom』を利用した合同取材に登場。レッズを含めたほぼすべてのJクラブが活動休止を余儀なくされている未曾有の事態にも、槙野は「自分を見つめ直すという意味で、すごく貴重な時間だと思っています」とパソコン画面越しに笑顔を浮かべた。 言葉通りに槙野はアクティブな日々を送っている。一日の流れを追っていくと、午前中を自宅内でできるトレーニングに費やしている。レッズの全選手が参加する週3回ほどのオンライントレーニングに加えて、上半身を徹底的に鍛え直す個人トレーニングを課していると槙野は明かす。 「こういう(中断されている)状況のなかで、海外組の選手たちがどのようなトレーニングをしているのか、どこを鍛えなければいけないのかと思ってコンタクトを取りました。そのなかで自分の身体でもう少し太くするところ、大きくするところが上半身だった、ということですね」
「引退後は監督」B級ライセンス取得スタート
最も触発されたのは今年1月末にセリエAのサンプドリアへ期限付き移籍した、日本代表のキャプテンを務める吉田麻也のトレーニング内容と言葉だった。ポジションも同じセンターバックで、ひとつ年下と年齢も近い吉田に倣った成果が、着ているユニフォームの上着にあると槙野は胸を張った。 「シーズンが始まる前と一緒のサイズなんですけど、ユニフォームがパツパツなんですよね」 中断前に行われ、ともにレッズが勝利したYBCルヴァンカップのグループリーグ初戦、明治安田生命J1リーグ開幕戦で槙野は先発から外れている。昨シーズンまでの3バックが4バックに変わったなかで、センターバックの先発を射止めたのは30歳の鈴木大輔と25歳の岩波拓也だった。 「いい刺激に、いい危機感になっていますよ。ベンチに座っているのは個人的には面白くないし、試合に出てなんぼだと思っているので、再開したときにベンチで燻っているわけにはいきません」 一転して午後にはパソコンと向き合う時間が増える。日本サッカー協会(JFA)が発行する公認指導者ライセンスのなかで最高位となる、日本代表とJクラブで監督を務められるS級コーチへ向けて、第2ステップにあたるB級コーチ養成講習会にEラーニングを介して臨んでいるからだ。 JリーガーがS級コーチになるには、C級からスタートしてB級、A級ジェネラルと段階を踏んでライセンスを取得していく必要がある。そして、20試合以上の国際Aマッチに出場している現役プロ選手は、B級コーチ養成講習会の専門科目をEラーニングで受講できる資格をもっている。 31歳にして悲願のワールドカップ初出場を果たした、2年前のロシア大会を含めて国際Aマッチ38試合に出場している槙野は、すでにC級ライセンスを取得している。その上で「こういう状況だからB級ライセンスの取得をスタートさせた、というわけではないんですけど……」と断りを入れた上で、いつかは必ず訪れる現役引退後の自身の姿として思い描いてきた夢を明かした。