「ギリギリのところで…」なでしこジャパン、ベスト8敗退の原因。選手の本音は「手応えしかなかった」【パリ五輪現地コラム】
「相手のストロングは消せた」なでしこジャパンの狙いとは?
「正直やっていても、手応えしかないというか、この人たちには敵わないなと思う相手ではなかった。それはどの相手と戦ってもそう思えるところまでは来ていると思う。ただ、そこから本当に一歩先っていうのが自分たちの壁になっていることは間違いない」 ワールドカップの世界一も、五輪の銀メダルも、アジア予選敗退も知る熊谷は、パリ五輪での激闘を終えた後にそう話している。3年前に0-3で敗れたスウェーデン女子代表戦に比べれば、歯が立たなかった相手ではないことは明らかだが、勝負は決した。 前半は一方的にアメリカがボールを持つ時間が続いた。一時はなでしこジャパンのボール保持率が20%を切るほどで、自陣に押し込まれ続けた。ただ、それは決してネガティブなものではなく、想定の範囲内だった。なでしこジャパンはアメリカのカウンターを警戒しており、相手にボールを持たせるというのは、相手の武器を封じるための戦略でもあった。 「相手のストロングの部分はしっかり消せたんじゃないかと思っていますし、相手も困っている部分はあった」と池田太監督は言う。長野風花が「(ボールを)回されるぶんには何も思わなかった」と話すように、相手もボール保持をしていてもそこからクリエイティブな攻撃を見せたとは言い難く、前半は想定通りの試合運びを見せることができた。 勝負は後半だった。後半開始からピッチに立った浜野は「後半もしっかり守備から入って、チャンスをしっかり仕留めよう」と意気込んだ。その狙い通り、チャンスも作っている。51分には藤野あおば、浜野、守屋都弥とパスがつながったが、守屋のクロスは惜しくも相手にクリアされ、ファーで待っていた北川ひかるに通らなかった。ただ、明らかに潮目は変わっていた。
消耗戦で屈したなでしこジャパンの想定外
このシーンを筆頭に、後半は逆サイドのウイングバックがゴール前に侵入する場面が格段に増えた。しかし、ゴールネットを揺らせないまま時間が過ぎていく。90分を終えてスコアは動かなかったが、長野はピッチで手ごたえを感じていた。 「絶対にいけると思っていたし、チームを信じていた。正直、アメリカにボールを持たれても怖さは感じなくて、自分たちが攻撃したあとのこぼれ球を拾われてカウンターを受けるのが一番怖かったので、ボールを持たれているのは問題じゃなかった」 消耗戦に持ち込めば、なでしこジャパンの方が有利になりそうだった。アメリカはグループステージ初戦と第2戦で同じ11人を先発起用しており、第3戦で1人、この準々決勝で1人の変更にとどめている。実に9人が4試合連続で先発しており、準々決勝でも延長戦に入るまでは1人も交代枠を使わなかった。 一方のなでしこジャパンは4試合で18人を先発で起用している。残る4人のうち2人はGKで、谷川萌々子はブラジル女子代表戦で2得点に絡む活躍を、千葉玲海菜は4試合すべてに途中出場していた。プレータイムをシェアできていたなでしこジャパンの方が有利に見えたが、実のところ満身創痍だったのはなでしこジャパンの方だった。 4試合にフル出場した熊谷は試合後、偽らざる本音を明かしている。