オリンピックで『控え』に甘んじたジェイソン・テイタム「僕は人間。こういう状況に向き合うのは辛かった」
しかし2028年大会への出場に前向き「感情で決めない」
ジェイソン・テイタムはパリで思いがけない悔しさを味わった。パリオリンピック初戦のセルビア戦でプレータイムを与えられず、周囲はケガなど思わぬアクシデントがあったものかと心配したが、ヘッドコーチのスティーブ・カーは「40分間の試合で10人を超える選手を起用するのは難しい」と、この起用法を説明した。 指揮官は「相手次第で最善の組み合わせを使う」とし、テイタムは続く南スーダン戦で17分、プエルトリコ戦で23分、ブラジル戦で20分プレー。続く準決勝セルビア戦では再び出番がなく、決勝では11分間プレーしただけだった。 カーは「最善の組み合わせ」と説明したが、結局のところテイタムを控えとしか見なしていなかった。フォワードではレブロン・ジェームズとケビン・デュラントが絶対的な存在で、テイタムの役割はその隙間を埋めること。ふくらはぎを痛めて本大会がぶっつけ本番だったデュラントの回復が遅れていれば、その役割はテイタムに与えられたのだろうが、結局デュラントは初戦のセルビア戦で23得点と素晴らしいプレーを見せ、その後も好調をキープ。そしてテイタムは『脇役』に甘んじることになった。 目標は金メダルを獲得することで、12人の選手はそのために自己犠牲を払わなければならない。ただ、そこにはプライドの問題もある。チームで最もプレータイムの少なかったタイリース・ハリバートンはまだブレイクしたばかりで、生来の明るい性格もあって控えの立場を受け入れたが(それでも葛藤はあったに違いない)、テイタムはすでにNBAのスーパースターの一人で、NBAで優勝したばかりだ。チームに加わる時点で『脇役』になるとは思ってもみなかっただろう。 「多くの人が僕にメールをくれたり、手を差し伸べてくれた。僕のことを気にかけてくれる人がたくさんいるのが分かったよ。確かに、こういった出来事を次のモチベーションに変えることはできる。でも僕は人間であり、オリンピックのために多くの犠牲を払って全力で努力してきた。だから、こういう状況に向き合うのは辛かった」とテイタムは語る。 「NBAの新しいシーズンやまた別の機会に向けて新たに頑張ろうとは、その時には思えない。でも、今回の経験からも学ぶことはあるし、それを次に生かす。これは挑戦でもあるし屈辱でもある」 テイタムは代表チームに参加するのはもう十分だと考えているのだろうか? その答えは明確に「ノー」だった。 「コート上では個人的にキツい経験をしたけど、今後のことを感情で決めるつもりはない」と彼は言う。「2028年にプレーするかと聞かれたら、4年後のことだから分からないとしか答えられない。時間をかけて考えるよ。でもそれは、今回の経験がどうだったか、個人的な感情で決めるものじゃない」 ロサンゼルスオリンピックでテイタムはアメリカ代表の中心選手としてプレーするのか。その時にはテイタムは30歳になっており、キャリアの円熟期に入るところ。今回とは違いリスペクトされて、チームを牽引する可能性は十分にある。