火葬待つ安置施設“遺体ホテル”まで登場…増え続ける『身寄りのない遺体や遺骨』高齢化社会から多死社会へ
24時間、遺体との面会ができ、20体を収容できる霊安室から自動で運ばれる仕組みだ。
別のフロアには家族専用の面会室も7室用意されていて、祭壇には花や思い出の品、写真も飾ることができる。
「遺体ホテル」の事業は、時代の要請だったという。 「ラステル新横浜」を運営する「ニチリョク」の担当者: 「(火葬までは)亡くなられてから4~6日後が平均になっています。なかなか自宅での安置が難しい状況が10年前から出てきておりまして。そういったお困りの声が多かった」 この施設では27体の遺体を安置することができるが、時期によっては全て埋まることもあるという。この会社では事業の拡大を視野に入れている。
「ニチリョク」の担当者: 「お客様からも例えば『東京にないの』とか、いろんなお声もありますので、こういった形で少しずつ展開できればという思いもありますし、お客様がお見送りされるときですね、お客様が安心して臨める施設をこれからも作っていきたい」
■住宅街の「遺体ホテル」は過去に住民とトラブルも
「時代の要請」とはいえ、住民とトラブルになるケースもある。東京都に隣接する神奈川県川崎市では2014年、住宅街に突如、ある業者による遺体保管施設の進出計画が持ち上がった。
当時、自治会長を務めた黒田守正さん(88)ら住民たちは反対運動を起こした。 黒田守正さん: 「居ても立っても…そういうものが隣にあって置かれたんじゃね、たまらないから」
説明会も行われたが、業者と住民側の主張は平行線をたどった。 業者: 「エアコン、換気、全て屋上に室外機を設置させていただきます」 住民: 「そこに車が来て、止まった。あ、死体が来たんだ。それが不安だということ」 業者: 「申し訳ございません、24時間営業というのは変更する予定はございません」 住民: 「重い責任をね、負うってことだけは自覚してくださいよ」 施設は建築基準法上の「倉庫」として届けられ、営業が始まったが、その後、事業は行き詰まり、撤退を余儀なくされた。 黒田さん: 「ただとにかく私らにしてみると、遺体置き場がなくなったことで安堵。そんなところですけどね」 地域を巻き込んだ騒動になったことを受け、川崎市は「葬祭場等の設置等に関する要綱」を定めた。罰則はないが、遺体保管所などを設ける際、事業者と住民の対話や住環境の保全を求めたほか、市長は必要な措置を講ずるよう事業者に「勧告」することもできるという。
川崎市まちづくり調整課の担当者: 「要綱は基本的に施設等を規制するものではございませんので。今後、そういう亡くなられた方が多くなった時に、民間がやる、とりあえず遺体保管する場所を規制する形になれば、あくまで国の方が考えるような内容になってくるんだろう」 さまよう遺体や遺骨、火葬をとりまく現実は、改めて「多死社会」との向き合い方を私たちに問いかけている。 2024年6月26日放送