高級感求め飲食店が採用 福山の美を凝縮したテーブルマット 金襴・天然木生かし鏡面塗装
福山の伝統産業と塗装技術を融合させた板状のテーブルマット「折敷(おしき)」が、各地の飲食店などに新風を吹き込んでいる。塗装業シップペイント藤田(広島県福山市御幸町)が、市内の企業が手がける金襴(きんらん)と突き板を一枚のボードに閉じ込める。地元が誇る「美」の発信に一役買っている。 スギの年輪が特徴的なテーブルマット 金箔(きんぱく)を巻いた糸で豪華な文様を紡いだ金襴と、家具などの化粧材として使われる突き板を使用。プラスチックとアルミの合板にそれぞれ張り付け、上からポリエステルの塗料を薄く塗る。塗料が固まると表面を研磨剤で磨き、平らにしながら再び塗る工程を1カ月半かけて8回以上繰り返す。 ピアノなどで使われる鏡面塗装で仕上げ、金襴と突き板そのままの美しさが食卓などを彩る。「伝統工芸の見せ方を変えたかった」と堀内康秀社長(69)。製品は全て、職人でもある堀内社長の手作りだ。 同社は本来、建物や家具、船舶の塗装を手がける。折敷を作るようになったきっかけは、妻で常務の忍さん(54)が2017年に訪れた東京の展示会。塗装職人が鏡面塗装で絹織物を飾り付けた扉を目にし「福山の金襴の方が美しいと思った」と言う。 京都発祥の金襴は、約100年前に繊維産業が盛んだった備後地域に伝わった。今は中村金襴工場(神辺町)が唯一、市内で伝統の灯を守る。堀内社長は端材の提供を受け、試行錯誤。塗料による変色や収縮などの課題をクリアし、19年に商品化した。 中村金襴工場の中村佳弘社長(64)は「きれいな仕上がりで金襴の良さが表現されている。異なる分野で金襴を広めてもらえるのはありがたい」と歓迎する。 金襴に続き、堀内社長は塗装業で付き合いのあった大和ツキ板産業(御幸町)とも協力。厚さ0・2ミリにスライスした天然スギの年輪が鮮やかな突き板も取り入れた。 塗料の間に布や木を忍ばせることから「忍(しのび)」のブランド名で、テーブルマットのほかティーマットやコースターを制作。関東地方のホテルやレストランで高級感を演出するほか、東京にある広島県のアンテナショップでは外国人観光客に土産物として人気を集めている。 販売のほか、空間に合うか試してもらえるよう定額利用サービスも始めた。堀内社長は「福山の良いものをずっと身近に感じてもらえれば」と話している。
中国新聞社