“100年に一度の変革期”に湧く長崎。注目エリア・島原半島の「地域活性化」を現地からレポート
醸造所にほど近い小浜ワイン食堂では、長崎の食材を豊富に使った料理と自社醸造のワインを提供する。バレイショの新品種である「ながさき黄金(こがね)」で作ったフライドポテトや地元のみかんを使った「雲仙蜜柑ワイン」、自社栽培のブドウを使った「長崎ヌーヴォー」など。地元の人だけでなく観光客にも好評だという。
夫婦で雲仙市に移り住んだ諸山岳志さん・朗(あき)さんは、空き家を使ったゲストハウス「諸山宿舎」を23年4月にオープンした。内装は美術大学出身の諸山夫妻が、ほぼ手作りしている。
「暮らすように過ごしてほしい」との思いから、あえて浴室と食事は提供していない。徒歩圏内の小浜温泉街で温泉に入り、地元のレストランや居酒屋で食事をする、あるいは地元食材を使っての調理を推奨している。国内旅行者がメインだが、ちらほらと訪日外国人も訪れているそうだ。
小浜出身の元村龍馬さんは、閉館した築70年の老舗旅館恵比寿屋を購入して、「癒やし」をコンセプトにした複合型施設「ととのい処 ゑびすや」を、この1月にオープンした。旅館の客室を活用したリラクゼーションサービスに加え、カフェやイベントスペースも備える。医学療法士と鍼灸師の資格を持つ元村さんは、「近隣の旅館やホテルに宿泊した観光客などにマッサージを提供したい」と話す。施設内には温泉もあり、屋上にサウナを建設する計画もあるという。
歴史ある古民家を再利用した新事業も
地域に残る古民家や武家屋敷を再利用した新事業例も複数見られた。23年3月、島原市にオープンした「水脈 mio(ミオ)」は、江戸時代からある築170年超の古民家を改装し、ホテル、カフェ、コワーキングスペース、オフィスの4つの機能を持たせた複合施設だ。
同施設の運営を手がけるのは、建築設計事務所「INTERMEDIA(インターメディア)」で、地元の人や観光客が集まって交流できる場所を作り、地域活性化につなげたい意図がある。耐震補強の基準を満たしつつ、元の姿を極力残している。