心理的安全性を説く100年前のアドラーの教え アドラー心理学で一番大事な考え方とは何か
■100年たっても「新しい」 アドラー心理学は、100年たっても古びない、むしろ時代がますます追いついてきた感のあるものです。 アドラーは「横の関係」を大切にしていました。上下関係で人間関係をとらえることは、精神的な健全さを失うものと見ていたのです。この考えは、今の世の中にはとてもあった考え方なのではないかと思います。 人間に「役割の違い」はあっても、人間に「上下」はない。これは親と子、教師と生徒、カウンセラーとクライアントでも同じです。
私はよくビジネスマン向けにセミナーや研修・講演を行うのですが、上司と部下は、役割の違いであって人間の立場の違いではないとお話しします。 たまたま上司は、「上司」という役割をもっているだけで、部下より人間として上というわけではありません。人間に上下はないものです。 ■「心理的安全性」と「共同体感覚」 さらには、今、「心理的安全性」という言葉がビジネスの分野を中心に広がっています。 「生産性が高いチームは、心理的安全性も高い」。Googleが実践していることで有名になった考え方です。意見を言いやすく、お互い協力し合っているような心理的安全性があるチームでは、建設的な活動ができるのではないでしょうか。
この心理的安全性と、先ほどアドラー心理学で大切な概念とお伝えした「共同体感覚」は、非常に近い考え方なのです。 共同体感覚とは、共同体に対する所属感、共感、信頼感や貢献感などを総称した感情・感覚になります。 共同体に対して「居場所がある」「ここにいれば安心できる」という所属感をも含むのです。 社会の中に居場所がある、この組織にいれば安心だと思える、そういう感覚も大事にしているのです。そういう感覚があるからこそ、人は自分らしさを生かしてのびのびと貢献できるのだといっています。
こうした点から、「心理的安全性」と「共同体感覚」には近しいものがあると感じます。 100年前に語られたアドラーの言葉が、今も新しく受け止められるものであることに驚きを禁じえません。 ■「貢献の心理学」といわれる理由 人はそれぞれ違って当たり前、もちろん能力にも違いがあり、遺伝的に違うこともあります。個性もバラバラです。 1人ひとり違う人間が集まる共同体であっても仲間に信頼感をもち、自分の役割を果たし、仲間のために何ができるか、社会のためにどうすべきかを考えることが大切なのです。これが共同体感覚です。