伝統文化で「五感揺さぶる体験を」 日本の魅力発信 西武HD
西武ホールディングス(HD)が伝統文化関連事業に力を入れている。同社保有の歴史ある宿泊施設などを活用し、伝統芸能や工芸品といった日本の魅力を発信。スポーツ・アーツ&カルチャー事業戦略部の國貞幸枝部長は「日本の伝統文化を通じて五感を揺さぶるような体験を提供していきたい」と力を込める。 【写真特集】インタビューに答える西武ホールディングスの國貞幸枝部長 ◇インバウンド、若手中心に新たな動き 経済産業省によると、2020年時点の伝統的工芸品の従業員数(約5万4000人)と生産額(約870億円)は、それぞれ1980年ごろと比べて8割以上減少。國貞氏は「担い手の減少や生活様式の変化などにより、(日本の伝統文化は)厳しい状況にあるが、海外のお客さまが興味を持ったり、若手工芸家が販路を海外に求めたりするなど、新しい動きもある」と指摘する。 こうした現状も踏まえ、西武HDは今年5月に公表した「西武グループ長期戦略2035」で、成長に向けて取り組むべき重要テーマの一つに「五感を揺さぶる体験創造」を掲げ、伝統文化などを主要コンテンツに位置付けた。その事業の一翼を担うのが、スポーツ、芸術、文化を軸にグループ横断的な施策を進める22年新設のスポーツ・アーツ&カルチャー事業戦略部だ。 西武HDは具体的な取り組みとして、読売新聞グループ本社による伝統文化を次世代に継承する支援プロジェクト「Action! 伝統文化」に参加。第1弾として、23年7月に人間国宝の室瀬和美氏(蒔絵=まきえ=)、十四代今泉今右衛門氏(色絵磁器)による、工芸と食のイベントを料亭「有栖川清水」(東京都港区)で実施した。 ◇顧客基盤と伝統文化つなぎ、新しい価値創造 今年2月には静岡県・伊豆長岡温泉の旅館「三養荘」で、江戸時代から続く伝統芸能「人形浄瑠璃文楽」の公演を開催し、人形遣いの吉田勘彌氏の演出で、宿泊客向けに「ひらかな盛衰記 神崎揚屋(かんざきあげや)の段」を上演。國貞氏は「人間国宝の伝統工芸作品が飾られた舞台でもあり、大好評だった」と手応えを感じており、来年2月にも三養荘で文楽を堪能できるイベントを実施する。 10月には東京都内の「ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町」で、米人気歌手のレディー・ガガさんが愛用した「ヒールレスシューズ」を手掛けた現代アーティストの舘鼻則孝さんらのトークショーを開催。海外でも活躍する舘鼻さんは「日本の工芸文化とその進化した形を世界に発信していきたい」と強調した。 西武HDは今後、全国各地の伝統芸能・工芸品などをテーマに、地域貢献やにぎわい創出に取り組む。國貞氏は「西武の顧客基盤と伝統文化をつなぎ、西武ならではの体験を生み出すことが、グループの価値を高めるとともに、伝統文化の振興に向けて新しい価値をつくり出すことになる」と力強く語った。