暴力事件を起こしたマフィはラグビーW杯日本代表に復帰させるべきか?
国際舞台での復帰初戦ではまず、ラン、タックルといったヴィヴィッドなプレーで存在感を示した格好。今後の復調次第では下働きでもチームを支えうるが、これから本当に求められるのは本人と受け入れるチームの精神的な成熟だろう。 マフィは平時こそ慎ましく穏やかだが、練習中などにヒートアップする傾向も見られていた。そのため復帰時は、当の本人も「これからももっとメンタルをしっかりして、100パーセントの準備をしたい」と自己分析。NTTコムの内山浩文ゼネラルマネジャーに「チームの打ち上げでも皆に『今回はごめん』と言っていた」と見られるなど、気を引き締めている様子だ。 感情の制御については専門家の支援が必要と言われがちだが、本人に高い目標を示すことも効果がありそう。事件後、NTTコムの熱心なコーチのひとりがマフィに言ったようだ。 「あなたの目標は何ですか? 私は、ワールドラグビーの年間最優秀選手賞にノミネートして欲しいと思っています。そのためには何が必要ですか?」 マフィを受け入れるRWCTSおよびサンウルブズも、リーダー格曰く「チームカルチャーはこれから作っていくところ」とのことだ。 4年前のイングランド大会時は、出番のなかった廣瀬俊朗元主将らがグラウンド周辺のごみを率先してひろうなど献身。強さと折り目の正しさを両方させた結果、強豪の南アフリカ代表などから3勝した。試合に出ていた中堅選手が「試合に出ていない選手が腐らずにやってくれたことが大きかった」と述懐するように、スパイクを脱いだ後の振る舞いも試合の質と見えない糸でつながっている。
一方、今年2月に都内であったRWCTSキャンプでは、一部選手が練習後にファンやメディアと接するエリアを通過せず、それを周囲は黙認した。マフィが精神的成長を目指すなか、ともに歩むチームにグラウンド外での課題はないか。そう問われたジェイミー・ジョセフヘッドコーチは「私が知る限りこのチームで問題は起きていない」と強調する。 「選手、コーチとも意思統一できています。代表選手としてどう振舞うべきか、どう見られているかも自覚している。ホームでのワールドカップがある点もです。我々はいい選手、いいコーチいい人である必要がある。誰とでも気取らずに接しやすいうえ、謙虚でなくてはいけない。そこを阻害する人間がいれば、チームには入れません」 一部では、マフィの代表復帰の是非そのものが議論されているようだ。しかしサンウルブズの渡瀬裕司CEOは、一般論として「(過ちを犯した選手にも)再挑戦の機会は与えるべき」と話していた。 アルコール絡みの問題を起こしたことのあるオーストラリア代表のカートリー・ビールなど、トラブルを起こしながらも第一線に戻った海外の代表選手は少なくない。アスリートが規律を破った際に求められるのは、再チャレンジを促すことと、その様子を第三者が適切に見守ることではないか。 ワールドカップ開幕まで半年あまり。果たしてマフィは真のハイクラスな選手に、日本代表はハイクラスな選手を揃えた真の戦闘集団になれるだろうか。 (文責・向風見也/ラグビーライター)