歯学博士照山裕子の100歳まで食べられる歯と口の話

「100歳まで食べられる歯と口の話」＜4＞ 　細菌は口の中だけでなく、体中に住んでいます。手指はもちろん、鼻や耳など外界と接しているあらゆる部分には細菌が入り込んでくるのですが、新陳代謝を繰り返している上皮細胞で覆われている場所では2週間ほどで表面が剥がれ落ちていきます。この際に細菌もともに排出されるので、新鮮な組織に生まれ変わります。擦り傷もかさぶたができて治るイメージです。 　ところが歯はそうではなく、細菌の塊が「バイオフィルム」という、ぬめり汚れとなって表面にへばりつきます。機械的に擦らなければ落ちないこの物体が、いわゆる「歯垢（しこう＝プラーク）」と呼ばれるものです。歯の白くて平らな部分は、頬や舌、食物などが接することで、ある程度汚れも落ちています。歯垢がたまりやすいのは、歯と歯が重なった部分、歯と歯の隙間、歯と歯ぐきの境目といった場所です。こうした部分をきれいに保つには、歯ブラシだけでは不十分で、歯間清掃用具（歯間ブラシやデンタルフロス）が必須です。 　現代日本において、歯間清掃用具を使っている方の割合は年々増え続けています。実際に、厚生労働省が21世紀の健康施策として提唱した『健康日本21』においても、成人の歯周病罹患（りかん）率低減のための具体的な目標として「歯間清掃用具の使用」が掲げられています。効果を最大限に発揮するには、選び方はもちろん、使用方法やタイミングにも気を付ける必要があります。歯科医院で適切なものを提案してもらうのが近道ですが、大まかにいえば「狭い隙間はデンタルフロス」「広い部分は歯間ブラシ」と捉えると良いでしょう。どちらかひとつと決めるのではなく、自分の歯の状態に合わせて適材適所というイメージです。どんなやり方でも構いませんから、まずは最低でも1日1回取り入れる習慣を身につけましょう。夜のケアにプラスするのがおすすめです。