中国系ECのSHEINが競合Temuを知的財産権侵害で提訴、訴訟合戦つづく
中国系EC大手のSHEIN(シーイン)は、ライバルのTemu(テム)を知的財産権の侵害で提訴した。テムは、シーインが販売する商品をコピーしてオンラインマーケットプレイスと「見せかけている」と主張している。しかし、当のシーインもまた、他のブランドや小売業者からも同様の申し立てを受けている。 米国時間8月19日にワシントンD.C.の連邦裁判所に提出された訴状の中で、シーインは、PDDホールディングスが所有するテムが企業秘密の窃盗、偽造、商標と知財の侵害、虚偽広告などの「組織的なスキーム」を指揮したと非難している。 シーインが主張するところによれば、テムの少なくとも1人の従業員が、シーインの売れ筋商品を特定する「貴重な企業秘密」を同社から盗み、テムはその売れ筋の「コピー商品」を販売するよう同社のプラットフォームを利用する販売業者に指示したという。 シーインは、テムが販売業者に知的財産権の侵害を「奨励」し、ブランドがテムのウェブサイトから製品を削除するのを妨げていると主張している。 また、テムがX(旧ツイッター)に、シーインのアカウントであるかのように「見せかけた」偽のアカウントを作成し、「顧客をシーインのプラットフォームからテムのプラットフォームへ誘導」しようとしたと、シーインは主張している。 シーインはテムに対し、弁護士費用に加え、陪審員裁判により決定される損害賠償の支払いを要求している。 フォーブスはテムにコメントを求めたが、米国記事公開時点では返答を得られていない。 シーインとテムが互いに提訴をし合うのは今回が初めてではない。テムは12月、シーインがメーカーに対して「マフィア式の脅迫」をしているとして同社を訴えた。テムは、シーインがテムの「ビジネスを違法に妨害」するために、何万件もの違法な著作権侵害請求を行うなど、ますます攻撃的な戦術を展開したと主張している。この訴訟は現在進行中だ。 テムは昨年7月にもシーインを提訴している。シーインがテムとの関係を絶つようサプライヤーを脅し、威圧しているとして独占禁止法違反を訴えている。一方のシーインは昨年3月、テムが自社のプラットフォームを宣伝する際、シーインについて虚偽の発言をしたとしてテムを訴えた。これらの2つの訴訟はいずれも10月に取り下げられている。 他のファッションブランドや小売業者も、シーインを著作権侵害で訴えている。H&Mは昨年7月、シーインが同社の知的財産を盗み、模倣品を販売しているとして、シーインを訴えた。その他、ドクターマーチン、ラルフローレン、リーバイ・ストラウス、プーマ、アディダスも同様の訴えを起こしている。これらの訴訟は現在も進行中である。 シーインとテムは、低価格と多種多様な品揃えで知られるオンライン小売業者で、近年人気が高まっている。テムのオーナーであるPDDホールディングスは、中国のEコマースプラットフォームの拼多多(ピンドゥオドゥオ)も運営している。テムは2022年9月に米国でサービスを開始し、中国の業者がアメリカの消費者に直接販売・発送できるようにすることで、「中間マージンをカット」し、低価格を維持できると主張している。 一方、2008年に設立されたシーインは、世界で最も人気のある衣料品ブランドの1つとなり、2022年には売上高1000億ドル(約14兆5473億円)を達成した。同社に対しては、17時間労働を要求されたり、製品にミスがあった場合は給与が減額されるなど、安全でない労働条件下で作られた製品を販売していると批判する声もある。
Ty Roush