中国で「ブルーカラー」の賃金が大幅アップの背景 待遇改善とともに、若い労働者の意識にも変化
中国では近年、製造業やサービス業の現場で働く「ブルーカラー」の求人が急増し、賃金が上昇し続けている。 【写真】中国の家電大手ハイアールの生産現場でロボットを操作するオペレーター 求人サイトの智連招聘が発表した最新レポートによれば、ブルーカラーの平均賃金水準は過去5年間で35.8%上昇。そんな中、(ホワイトカラー志向が強いとされる)中国の若者のブルーカラーに対する認識も変わりつつあるという。 ブルーカラーは第2次産業(製造業)と第3次産業(サービス業)に属するさまざま職種を含み、その人口は膨大だ。首都経済貿易大学の新就業形態研究センターのレポートによれば、中国のブルーカラーの総数は約4億人に上り、就業人口全体(約7億4700万人)の5割超を占めている。
■宅配サービスの求人は9倍に 前出の智連招聘のレポートによれば、ブルーカラーの求人は年を追うごとに増加しており、2024年1~3月期は5年前(2019年)の同じ期間の3.79倍になった。 職種別に見ると、求人の伸びが最も顕著なのは宅配サービスで、5年前の約9倍に増加した。その要因はネット通販やネット出前の急拡大にあると見られている。 その他の職種の求人もおしなべて増えている。工場の一般作業員や技術工、家事サービス業、トラックやバスの運転手、建物のメンテナンス要員や警備員、飲食サービス業などの求人はいずれも3倍以上に増加した。
注目すべきなのは、中国の産業構造の変遷とともに、ブルーカラーに求められるスキルにも変化が見られることだ。 例えば、中国の製造業では(ロボットの大量導入など)工場のスマート化が急速に進んでいる。その結果、工場労働者の求人ではデジタル制御の工作機械などを操作できる専門技能職のニーズが5年前の5倍以上に増加。その募集賃金の平均値は、2024年1~3月期は月額8281元(約17万8000円)と5年前の1.49倍に上昇した。
また、健康や美容に対する人々の関心の高まりを受けて、ヘルスケア関連のビジネスが拡大。それに伴うサービス要員の求人が急増しており、2024年1~3月期の募集賃金の平均値は1万637元(約22万8700円)と5年前の1.54倍に上がった。 ■半数近くが前途を楽観 このような変化を背景に、若者の意識も変わりつつある。ブルーカラーの職種を進んで選択する若者が増えているのだ。 智連招聘のレポートによれば、2024年1~3月期に就職した25歳以下の求職者の総数は、5年前より62.4%増加した。これをブルーカラー職種に限って見ると、25歳以下の就職者が2.65倍に増えたという。