【業界に激震!】 日産、厳しい状況に陥った背景と未来への道筋 「苦境に必要なのは夢を語ること」
強烈なインパクト
これほど強烈なインパクトになるとは、日産側も想定していなかったのではないだろうか。 【写真】会見の様子と日産の最新モデルを写真でみる (208枚) 日産は11月7日、2024年度上半期の決算を発表。売上高が791億円減の5兆9842億円、また当期純利益は2770億円減の192億円まで落ち込んだ。 このうち、第2四半期のみで見ると、当期純利益は2001億円減で93億円の赤字だ。通期見通しについても、1兆3000億円減少して12兆7000億円と大幅に下方修正した。 日系自動車メーカー各社の上期決算でも、中国市場の変動や、日本国内では認証不正問題による生産中止によって売上高と純利益がマイナスに触れている。だが、日産と比べると、落ち込み方はさほど大きくない。なぜ、日産だけ業績悪化が目立つのか、疑問に思う人が少なくないはずだ。 また、今回の決算を受けて、日産はグローバルで合計9000人を削減することを明らかにした。生産台数についてもグローバルで20%削減とする。会見で、記者から「人員削減と生産調整する最終組立工場の場所や時期」について質問があった。 これに対して内田誠社長は、現在調整中であり実施の内容は追って公開するというにとどめた。合わせて、担当役員からは、グローバルでの生産25ラインを国や地域の状況によって変動させるとして、工場を閉鎖するという流れにはならないといった趣旨の回答だった。 それでも、この会見を受けたテレビ、新聞、ネット媒体での受け止めは「聖域なき9000人リストラ」がクローズアップされてしまった。
市場変化予測の甘さ
では、日産はどうして業績悪化したのか。最も大きな影響を受けたのは、日産の総販売台数の約4割を占める北米市場だ。 内田社長は「新型キックスなど新車に対して好評を得ている反面、主力製品でハイブリッド車がなく、インセンティブ(販売奨励金)の負担が増えた」と説明する。北米ではコロナ禍以降、テスラを中心としたEV販売が踊り場となり、EVに代わってハイブリッド車の需要が急激に高まっている状況だ。 日産のハイブリッド車といえば、エンジンを発電機として使うシリーズハイブリッド車であるe-POWERがある。 だが、日産としてはEV市場をリードする「アリア」や、利幅の大きなSUV、そして隣国メキシコから輸入する小型セダン「セントラ」などを主体とした販売方式を維持し過ぎて、北米市場の時流に乗れていない。 アメリカでは毎年夏に、イヤーモデルとして各モデルを導入することが商慣習となっているが、23年モデルでの判断が甘く、その影響がいまになって販売減を招いた。 販売での苦戦をカバーするべく、販売奨励金(インセンティブ)に手をつけてしまい、利益を圧迫したかたちだ。日産は近年、ゴーン体制から続いた負の遺産を一掃するため、事業再生計画「日産NEXT」を掲げ、北米でのインセンティブ依存から転換したばかりだった。 結果的に、北米市場の変化に対する「先読みの甘さ」があったと言わざるを得ない。