70代父の死「実印押せよ」書類を投げる弟…遺産分割にいらだち募らせ15年の長女、今度は母の死で相続問題再浮上のツラすぎる現実
買主が決まってからも、まだ道は遠く…
井上さんの実家は人気エリアの住宅街にあり、すぐに路線価評価の1.5倍の価格で購入申し込みが入りました。筆者も先方の代理人の弁護士も、売却は容易だと考えましたが、それからも井上さんと弟の足並みは揃わず膠着状態となり、実際に売却が確定したのは半年たってからでした。 遺産分割協議書の作成、相続登記、測量の開始、不動産売買契約まで、本当に長い道のりでした。 相続人が顔を合わせての調印はできず、それぞれ順番に署名・押印し、印紙もそれぞれが貼り、各自、原本を保有する形となりました。 結局、2人が顔を合わせることは一度もなく、残念ですが、長年の確執が解消されることはありませんでした。 とはいえ、父親が亡くなってから15年間、ずっとかかえてきた問題は解消し、ようやくひとつハードルを超えたといえるでしょう。
自宅不動産を持つ人は、遺言書の準備が必須
だれしも、自分が育った実家には思い入れがあるものです。大人になって実家を離れていても、「実家を残したい」と希望する方は少なくありません。自身が購入した親世代はさらにその思いが強く「この家を残し、子や孫に継いでもらいたい」といいます。 しかし、相続人が複数の場合、遺産分割協議はなかなかの難題となります。相続財産の大半を実家不動産が占めていれば、なおさら分けにくく、遺産分割は不公平になりやすいのです。 自宅不動産を保有し、これから自身の相続を考える必要がある方は、ぜひ下記に留意して準備をしましょう。 【生前】 遺言書で家を相続する人を決めておく 遺言書の内容を相続人全員に知らせ、自分の意思を伝えておく 不公正感のない分割案を作っておく 不動産と金融資産のバランスが取るようにする バランスが取れていない場合は、生前に自宅を売却するなどして分けやすくしておく 【相続時】 相続人全員で情報共有、コミュニケーションを取る できるだけ公平な分割にする 相続の専門家のアドバイスを受け、依頼する 相続登記が義務化されたことを説明、理解してもらう ※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。 曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士 ◆相続対策専門士とは?◆ 公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。 「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
曽根 惠子