“すべては眠りのため”ホテル「レム」に見る本気度 発祥は日本、加速する「進化系ビジネスホテル」
パンデミックで一時は低迷した宿泊産業。しかしコロナ禍が明け、現在、ホテル業界は再び活況を迎えている。客室のほか、レストランやスパ、宴会場などを備えるホテルは、これまでも時代とともに変化し、新しい価値を提供し続けてきた。近年はインバウンドの影響により多様化も進んでいる。 今回は「サービスの最高峰」ともいえるホテルの進化と価値づくりについて、星野リゾートで旅館再生事業を経験した林田研二氏の著書『ホテルビジネス』から、一部を抜粋してお届けする。
■日本のビジネスホテルの始まり みなさんも街なかでよく見かけるホテルの看板に「アパホテル」「東横INN」「ルートイン」「ドーミーイン」などがあると思います。 これらは一般的にビジネスホテルと呼ばれ、日本独自の発展を遂げてきました。それぞれの特徴は後述しますが、まずはビジネスホテル誕生の歴史を紐解いていきましょう。 日本のビジネスホテルの起源は、1920年代に京都で創業した「法華倶楽部」とされています。
当時、旅館が主流だった宿泊業界において、低価格で個室を提供するという斬新なスタイルで注目を集めました。その後、東京や大阪にも進出し、ビジネスホテルの先駆けとしてその名を広めました。 しかし、現在の一般的な大規模ビジネスホテルの創始者は、実業家であり政治家でもある小林一三氏といわれています。阪急電鉄をはじめとする阪急東宝グループ(現・阪急阪神東宝グループ)の創業者としても非常に有名です。 鉄道を中心とした都市開発や流通事業、観光事業などを一体的に進めながら、相乗効果を上げる私鉄経営モデルの原型を独自に作り上げ、日本の鉄道会社の経営手法に大きな影響を与えました。
1938年、東京の新橋駅近くに完成した「第一ホテル」は、全室冷暖房付きの客室で600室以上の客室を有していました。これが現在のビジネスホテルの原型といわれています。 この第一ホテルは高度経済成長の波に乗り、ビジネスホテルの有力ホテルチェーンになっていきました。しかし、1993年に高級路線の「第一ホテル東京」を開業後、平成不況などの荒波に飲まれ、現在は阪急阪神第一ホテルグループの一員になっています。