野村HD、相場操縦が呪縛に-わずかな利得の代償大きく
ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、伴英康氏は「ダメージはすでに出ている」と指摘。「同社は将来的に同様の事態を防ぐためにシステムと監視をどのように修正し強化したかを説明する必要がある。企業や業界がこうした問題に直面するときはいつでも、市場参加者の信頼と信用を取り戻すために懸命に取り組まなければならない」と述べた。
野村HDにとって今年は非常に好調な年だった。グループCEOの奥田健太郎氏は国内市場の取引急増を追い風に収益回復を主導した。11月1日発表予定の第2四半期(7-9月)決算では純利益で前年同期比79%増が予想されている。これにより3四半期連続の増益となり、発表資料に基づけば、約10年間で最長の四半期増益記録となる見通しだ。
野村HDの株価は今回の不祥事の影響にもかかわらず、相場操縦が初めて報じられた9月25日以降で3.8%上昇している。その間のTOPIXの上昇率は1.2%だった。
ただ今回の不祥事は好業績に影を落としている。
事情に詳しい関係者によると、相場操縦発覚を受け、大手生命保険会社や信託銀行、資産運用会社など少なくとも10社が野村証との一部業務を一時的に停止した。また、複数の日本企業や地方自治体が野村を引き受け主幹事から除外した。
ブルームバーグがまとめたデータによると、これにより野村証の社債市場での順位は9月の3位から10月には5位に低下した。リーグテーブルは金融機関にとっての成績表でバンカーのボーナスにも影響している。
国内外の金融機関幹部らへの取材によれば、野村証の法令違反を受け、競合他社は案件獲得や引き受けシェア拡大のため、同社の顧客に積極的に営業をかけているという。
野村HDの広報担当者は、競合他社の動きについては「コメントする立場にはない」とした。
明治大学商学部で機関投資家とコーポレートガバナンス(企業統治)を研究する三和裕美子教授は、「社員による法令違反であっても、それが起きることを可能にしていた組織に問題がある」とし、「野村は内部管理体制と金融機関特有のリスクの管理を徹底する必要がある」と述べた。