米男子ゴルフの今季開幕戦で優勝し、表彰式でトロフィーを掲げる松山（ロイター）

◆米男子プロゴルフツアー　ザ・セントリー　最終日（５日、米ハワイ州カパルア・プランテーションＣ＝７５９６ヤード、パー７３） 　単独首位から出た松山英樹（３２）＝ＬＥＸＵＳ＝が１イーグル、７バーディー、１ボギーの６５をマークし、ツアー新記録の通算３５アンダーで通算１１勝目を挙げた。開幕戦を制し、賞金３６０万ドル（約５億６５２０万円）を獲得。昨年８月のフェデックス・セントジュード選手権以来の勝利で、自身が持つアジア勢最多優勝記録を更新した。自己最多のシーズン４勝と初の年間王者に向け、最高のスタートを切った。３打差の２位はコリン・モリカワ（米国）。大会は２４年のツアー優勝者とポイント上位５０位までの選手が予選落ちなしで争った。 　淡々とプレーを続けた７２ホールの最後、松山が初めて感情をあらわにした。１８番パー５。２メートル半のバーディーパットを沈め、右拳を握った。ツアー新記録の３５アンダーで開幕戦を制した。「３４（アンダー）か３５か全然分からなかったけど、３５だったら、たしか記録だろうなと思ってた。そういうことを考えてたら入らないんだろうなと思いながら、打ったら入りましたね。入ってくれてよかった。記録が出せてうれしい」。２０２２年大会でキャメロン・スミス（オーストラリア）がマークした７２ホールでのツアー最少スコアを１打更新した。 　３番パー４のイーグルで加速した。残り１０７ヤードの第２打は、手前から２バウンドしてカップに飛び込みイーグル。「いいショットが打てた。チャンスについたなとは思ったが、歓声で入ったと分かった。うれしかった」。今大会から投入した新パター、スコッティ・キャメロンの００９Ｍセンターシャフトも武器になった。１１番で９メートル、１２番で６メートルをねじ込んだ。２勝した昨季でさえ、スコアにおけるパットの貢献率は全体の１２１位と低迷したが、今大会は３位。松山が得意としない、伸ばし合いのコースで逃げ切った。 　「この大会に向けて、どれくらい練習したのか」という海外メディアの問いかけを「あんまりしていないからなんにも言えない」と笑顔でかわした。体調不良のまま迎えた開幕戦だった。昨年末に発熱。今週は喉が不調で、口内炎も発症した。「動いたりするのは大丈夫なんだけど、しゃべると口の中が痛い」。早藤将太キャディー（３１）との会話も普段より少なめだったが、以心伝心で乗り切った。 　昨年１２月２７日にハワイに入った。昨季違和感を覚えることがあったアライメント（ターゲットに対する構え）を黒宮幹仁コーチ（３３）と見直しながら、スイングを微調整した。ショットのフィーリングが上向いた。理想とする２３歳前後の頃の感触に、近いものがあったという。第１ラウンドのスタート前の練習場で「久しぶりにゴルフが楽しくなってきた」と漏らした。そこに結果もついてきた。最高の形でシーズンのスタートを切った。 　世界５位　昨季は２勝を挙げ、パリ五輪では日本男子初の表彰台となる銅メダルを獲得した。「本当にいい年だった」と振り返った１年の流れをつなげた。昨年２月のジェネシス招待から１１か月足らずで３勝し、世界ランキングは６位から、６年１１か月ぶりにトップ５入りの５位に浮上。２２年に優勝したソニー・オープン（９～１２日、ハワイ州ワイアラエＣＣ）で、自身初の２週連続Ｖがかかる。「来週に向けてまたいい準備をしたい。コースに合わせられるように仕上げていきたい」。シーズン自己最多の４勝と、日本勢初の年間王者へ。松山の２０２５年が幕を開けた。 　◆松山　英樹（まつやま・ひでき）　１９９２年２月２５日、愛媛・松山市生まれ。３２歳。４歳からゴルフを始め、２０１１年の三井住友ＶＩＳＡ太平洋マスターズで日本ツアー３人目のアマＶ。プロ転向した１３年に４勝してツアー史上初の新人賞金王。同年秋から米ツアーに本格参戦し、１４年に初Ｖ。１７年６月に世界ランクで日本男子最高の２位。米ツアー通算１１勝。１８１センチ、８８キロ。家族は妻と１女。