ロボットは「脅威」ではなく「希望」── iRobotコリン・アングル会長兼CEO
── たとえば、入室すると照明が点灯し、すでに快適に過ごせるような室温になっている、といった機能が実現する? アングル その通り。ただし、何を動作させるかを決めるのは実は簡単だが、家の中の各部屋にどのようなデバイスがあるのかの把握が難しい。ここで、掃除ロボットが重要な役割を果たす。掃除ロボットは動作しながら、各部屋のどこに何があるのかの情報を収集して環境マップを作る。カメラも搭載しているので、たとえば実際に照明がオフになったかどうかも確かめられる。 目指しているのは、お客様が何もさわることなく、通常の生活をしている間に適切なことをしてくれるシステムの実現。ルンバは、今でもスマートホームの実現に役立つ機能を持っているが、さらに多くのことが実現できるよう、今後も開発に力を入れる。 ── 掃除ロボット以外に、どのような家電ロボットを開発していますか? アングル 人とのコミュニケーション機能やセキュリティ機能を持つ「ジーブス」というロボットを開発している。たとえば、2階で寝ている子供を起こしたり、住人の外出中はセキュリティのために家中をまわる。屋外で飼い犬が吠えていたら、何に向かって吠えているのかカメラで確認もできる。5年以内に開発、リリースしたい。 ── 今後、どのような分野に注力していくのですか? アングル 今後、われわれが一番注力するのは家庭用市場だ。長期的には、高齢者の自力による生活支援を使命としている。環境マップも2次元から3次元に進化すれば、物を拾う動作にも活用できるようになるなど、高齢者の自力での生活を支える上で、よりパワフルなシステムになるだろう。実現に向けてこれからも開発を続け、心躍る成長を遂げていきたい。家庭用市場以外のロボットについては、競合他社に期待する。
── スマートホームシステムのなかで、介護を担うロボットを新たにリリースする予定ですか? アングル その通り。すでに、病院で使われているロボットは開発済みだが、まだ高額で商用的な仕様となっているので、家庭向けにはより導入しやすい形で提供したい。 ── ロボットがますます進化すると、人間の仕事を奪うことにはならないのでしょうか? アングル テクノロジーは往々にして世界のあり方を変える。たとえば、食洗機や洗濯機の登場は、それまで何時間もかけていた作業をなくしてくれた。これらのイノベーションは、非常に破壊的だった。ロボットは今後、間違いなく社会に影響を与え、それによって人々はそれまで従事していた作業から解放され、別のことができるようになる。 重要なのは、われわれも高齢化していることだ。高齢化社会を支える若者の数も十分ではなく、今後さらに大きな課題になるだろう。今の生活水準を続けるためには、ロボットやスマートホームが必要となる。ロボットは「驚異」ではなく、「希望」だ。 (取材・文:具志堅浩二)