自宅を担保にお金を借りる《リバースモーゲージ》老後資金を残しつつ、リフォームや建て替えも。目的別活用事例と注意点
最近よく耳にする「リバースモーゲージ」。自宅を担保にお金を借りられるサービスですが、本当にメリットがあるのか気になっている人も多いのではないでしょうか。住宅ローンに詳しい専門家に、その仕組みと活用のコツを聞きました(構成=山田真理 イラスト=ひしだようこ) 【図】「リ・バース60」目的別活用事例 * * * * * * * ◆自宅に住み続けながら融資を受けられる 住まいの悩みは、年齢とともに増えていきます。「自宅が老朽化したのでリフォームや建て替えを検討したい。でも、老後の生活費やこれからかかる医療・介護費用としてある程度の現金は残しておきたいし……」という方も多いでしょう。 老後資金を残しつつ、リフォームや建て替えの費用を手に入れる。その方法の一つに、「リバースモーゲージ」という融資制度があります。これは、自宅を担保にして現金を借り入れるというもの。不動産は持っているけれど現金の蓄えが少ない高齢者を救済する手段として、世界各国で発展してきました。 現在日本で普及し主流となっているのは、2009年に登場した、満60歳以上が対象の「リバースモーゲージ型住宅ローン(【リ・バース60】)」。住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)が民間の金融機関と提携し、リバースモーゲージの仕組みをもとに独自開発した商品です。 自宅を担保にすることで、そこに住み続けながら自宅のリフォームや建て替え・購入など「住宅に関する融資」を受けることができます(子どもと同居する二世帯住宅は対象外)。利息だけ払い続け、元金は契約者の死亡後に自宅の売却などで一括返済する仕組みです。 「定年以降は住宅ローンが組めないと聞いていたけれど、怪しい商品ではないの?」と疑われるかもしれませんが、どうぞご安心を。これはメガバンクから全国の地方銀行、信用金庫まで幅広く取り扱っている、安全性が高く信用できる金融サービスです。
融資を受ける際の流れを上の図に記しました。まず金融機関が担保となる物件を評価し、融資限度額を設定。その範囲内で融資を受けた後は、契約者が亡くなるまで毎月利息のみ支払います。一般の住宅ローンより毎月の支払額が少ないため、年金生活者も利用しやすいのがメリットでしょう。 契約時に主債務者の配偶者を連帯債務者にしておけば、主債務者の死後も、配偶者はその家に住み続けることが可能。元金は債務者全員が亡くなった時に、相続人が担保物件を売却するなどして一括返済します。 この商品の大きな特徴は、あらかじめ住宅金融支援機構と金融機関が住宅融資保険契約を結んでいること。万が一相続人が元金を完済できない場合は、機構からの保険金で残りの元金相当額が補填されるようになっているのです。 これと似た商品に、「リバースモーゲージローン」があります。大枠の仕組みは【リ・バース60】とほぼ同じですが、生活資金であれば融資の使い道は自由です。 「そのほうがいいのでは?」と思うかもしれませんが、融資限度額が低く、金利はやや高め。担保物件の評価も厳しく、対象は首都圏など主要都市部の戸建住宅が中心なので、使い勝手がいいとは言えません。取扱金融機関も少ないのが実情です。 また、近ごろ広告などで目にする「リースバック」。リバースモーゲージと名前が似ていますし、「自宅に住み続けられる」という点で混同しがちですが、実はまったく別のサービスです。 現在の住まいを業者に売却して代金を受け取り、その後は買主にリース料(賃料)を払って同じ家に住み続けることができます。 一見便利なようですが、「本来の資産価値より2~3割安く買われてしまう」「賃料の合計額が数年で売却価格を超えてしまった」などの問題に加え、「賃貸借の契約更新を断られ、住み続けられなくなった」といったトラブルの報告が。私としては、読者の皆さんにとってメリットがあるサービスではないと考えます。