“エース”ニールが来日未定の西武野球はどうなるのか?
ボールパーク化を目指して約180億円をかけた大規模な改修を終えたばかりの、本拠地メットライフドームの“こけら落し”を勝利で飾った西武の辻発彦監督の口調は弾んでいた。 「やっぱり松本がしっかり投げてくれた、というところが一番嬉しいですね」 広島を1-0で下した16日のオープン戦。無死満塁から7番・木村文紀の遊ゴロ併殺打の間に三塁走者の山川穂高が生還した、2回の1得点だけにとどまった打線には思わず苦笑いを浮かべた。 それでも3年目の飛躍を期す2018年のドラフト1位右腕、24歳の松本航の粘投とともに、10日後の26日に開幕するペナントレースを戦い抜いていく上での大きな手応えをつかんだ。指揮官が続ける。 「本人も不安があったと思います。オープン戦が始まってから調子が上がっていなかったけど、前回もよかったし、今回もさらによかったというところで、本人が一番ホッとしているんじゃないですか」 4回途中で4失点を喫して負け投手となった3日の日本ハム戦、5回を2失点で抑えて勝ち投手になった9日の中日戦に続く登板となった松本は、7回二死まで広島打線を散発4安打の無失点に封じる106球の粘投で、昨シーズンの新人王右腕・森下暢仁に投げ勝った。 「テンポよく投げることを課題にマウンドに上がりました。ストレートは強い球が投げられたし、カーブで三振が取れたのもよかった」 松本自身がこう振り返るようにストレートはムラなく145キロ前後をマーク。加えて変化球もキレていた。 3回二死二塁で2番・菊池涼介を縦のスライダー。続く4回の先頭・西川龍馬を切れ味鋭いカットボールで見逃しの三振に斬って取るなど、5つの三振のうち4つを変化球で奪った。 昨シーズンは開幕ローテを任されながら、リーグワースト2位の56与四球、同1位の19被本塁打と不安定な投球が続き、7月には登録を一時抹消された。最終的にはチーム3位の投球回数103イニングをマークしたが、6勝7敗、防御率4.37という成績に誰よりも松本自身が満足できなかった。 2シーズンにわたって先発ローテの一角を担ってきた右腕ザック・ニールが、新型コロナウイルス禍に伴う入国制限の影響でまだ来日を果たせていない。当面はニール抜きのローテを組んで戦わざるをえない状況で、エース格に成長した24歳の右腕、高橋光成に続く存在として、自覚と責任を背負って課題の克服に取り組み、結果を出している松本の姿が辻監督の表情を綻ばせる。 「やっぱりああいうピッチャーは逃げないで、大胆にいくところはいかないといけない。その意味では(ストライクを)先行できたのも、カーブでストライクを取れたのもよかった」