人生初の空振り2連発も「切り替えて」 中島啓太が“埼玉出身選手初”の日本OP制覇へ首位浮上
<日本オープン 2日目◇11日◇東京ゴルフ倶楽部(埼玉県)◇7251ヤード・パー70> 最近では珍しいスタイルで登場した石川遼【写真】 地元・埼玉県で行われる日本一決定戦。主催する日本ゴルフ協会(JGA)が選出するナショナルチームにも在籍していた中島啓太にとって、アマチュア時代も含め5年連続8度目の出場となる今年の大会は、さらに力がこもる。 「(5バーディを奪った)きのうの後半のおかげで、きょうもいい流れでゴルフができた。要所要所をしっかり締めることもできましたね」。連日の60台となる「67」でトータルスコアを4アンダーまで伸ばし、首位に躍り出たラウンドについては、こう振り返った。 10番からスタートすると、603ヤードに設定されたパー5の13番で2打目をグリーン左まで一気に運んだ。そこからのアプローチを1.5メートルまで寄せると、続くパットを決めてバーディ。さらに14番も4メートルのチャンスをものにした。18番では50センチにつけるベタピンショットも披露。快調にスコアを伸ばしていった。 そのなかで「悔しかった」と顔をしかめたのが、4番でもバーディを重ねた直後に迎えた5番パー5だった。ここで前日の“トラウマ”を思い出すことになる。「一番寄らない場所に外して、アプローチがかなり(芝で)浮いているライだった。きのうの空振りが頭をよぎってしまって…」。 初日の7番。ここで中島はトリプルボギーを叩いているのだが、それはラフで「人生初」という空振り2連発によって引き起こされたものだった。その時も「打ち方が分からなかった」と浮いているボールに苦しめられたが、2日目の5番でも奇しくも同じような状況になってしまったのだ。「消極的な攻めになって、寄らず入らずで」。この日、唯一のボギーを記録してしまった。 だが「自分でコントロールできることをしっかりとやる」、そんな意識で臨んでいる大会だけに、しっかりと「切り替えていく」よう自らを鼓舞した。6番ティに向かう間に気合を入れ直し、「大事だと思った」という続くティショットをきっちりとフェアウェイに乗せることに成功。そこからはパーで乗り切り、トップの座を守った。 今回89回目を迎えた日本オープンにおいて、埼玉県出身選手の優勝はない。関東地方で優勝者がいないのも埼玉のみだ。こんな不名誉な記録は、その埼玉で返上したい。「週末はたくさんの方に会場に来てもらいたい。優勝できるように。苦しい時間も多いけど、苦しんでいるところは見せたくない。楽しくゴルフしているところを見せたいですね」。地元の期待を力と笑顔に変えていくつもりだ。 DPワールド(欧州男子)ツアーを主戦場にする今季は、これが日本で迎える2つ目の大会。前回は4月に行われた日欧共催の「ISPS HANDA 欧州・日本どっちが勝つかトーナメント!」だったため、純粋な日本ツアーはこれが初戦となる。3月にはインドで行われた「ヒーローインディアンオープン」で欧州初優勝。8月には日本代表としてパリ五輪にも出場するなど、充実した一年を過ごしている。 さらにここで日本一の称号を得ることになれば、またひとつ勲章が増える。「きのうの夜、キャディさん、トレーナーさんが空振りを笑いに変えてくれたので、引きずってないです。きょうもミスがあったので、練習して打ち方を研究したい」。しっかりとトラウマを克服し、地元で優勝トロフィーを掲げたい。(文・間宮輝憲)