IBMがDb2を5年ぶりにメジャーバージョンアップ、DB運用支援アシスタントもリリース
日本IBM株式会社は11月29日、AIデータベースの最新版である「IBM Db2 12.1」と、AIでDb2の運用を支援する「IBM Database Assistant」について説明会を開催した。Db2のメジャーバージョンアップは2019年以来5年ぶりで、11月14日より一般提供を開始している。 【画像】日本IBM 理事 テクノロジー事業本部 Data and AI事業部 事業部長 千田美帆子氏 IBMでは、2019年にAIデータベースについて、AIを組み込んだデータベース「Powered by AI」および、AIを生み出すためのデータベース「Built for AI」という2つの方針を表明していた。Db2 12.1では、この方針を引き続き継承し、さらに強化したという。 日本IBM 理事 テクノロジー事業本部 Data and AI事業部 事業部長の千田美帆子氏は、「Powered by AIの観点からは、データベース管理者の負荷軽減やエンジニアの学習コスト削減に重点を置き、Database Assistantを発表した。Built for AIに関しては、AIの活用基盤としてデータの重要性に注目し、AI技術を用いてミッションクリティカルなデータベースの機能を進化させている。また、2023年には生成AIを生み出すためのレイクハウスアーキテクチャwatsonx.dataも発表している」と述べた。 12.1の新機能について説明した日本IBM テクノロジー事業本部 Data and AI事業部 製品統括部長の四元菜つみ氏は、新バージョンの目玉となる機能のひとつとして、オプティマイザにAIを新たに採用したことを挙げた。 「従来のコストベースのオプティマイザをAIで進化させ、データのばらつきや分布の推定誤差を最小限に抑え、チューニングを簡素化し、パフォーマンスの向上と安定稼働を実現した」と四元氏は説明する。IBMの開発部門でリリース前にテストしたところ、「AIオプティマイザは従来型に比べ平均3倍の高速化を達成した」(四元氏)という。 このほかにもDb2 12.1では、200以上の機能を強化した。例えば、クラスタリングソフトウェアにPacemakerを採用し、よりシンプルなアーキテクチャを実現。また、列指向テーブルのオンラインスキーマ更新でDROPとRENAMEをサポートしたほか、UPDATEとJOINのパフォーマンスも向上させた。 このような多数の機能強化は、「開発業務そのものにもAIを組み込んだことで、生産性の高い開発が実現した」と四元氏。IBMの開発部門で活用中のツールは、11月に顧客に対しても一般提供を開始したという。 Db2では新たにライセンス体系も見直し、低コストでDb2の利用が可能な「IBM Db2 Starter Edition」を導入した。四元氏は、「小規模なデータベースの活用ではオープンソースも選択肢に入るが、オープンソースのPostgreSQLと比較してもDb2は5.4倍高速だ。他データベースからの移行も従来よりシンプルで、コストパフォーマンスよく企業向けAIデータベースが利用可能になる」とアピールした。 ■ AIでDb2の運用を支援 Db2の新バージョンとともにリリースしたのが、Db2の運用をAIで支援するDatabase Assistantだ。IBMのAIエージェントである「watsonx Orchestrate」がベースになっているという。 Database Assistantでは、チャットウィンドウに話し言葉で質問を記入すると、AIが迅速に回答を生成する。Db2に関する技術的な質問から、Db2の運用監視項目まで、幅広い内容に対応する。また、トラブルシューティングを簡素化し、性能問題の根本原因やボトルネックの特定をAIで加速化する。これにより、「Db2の運用を効率的かつ生産性高く実現できる」と四元氏は語る。 Database Assistantは、北米のマネージドサービスで提供しているDb2から機能提供を開始する。ソフトウェア版のDb2に向けては、2025年後半に提供を開始する予定だ。 最後に千田氏は、「AIの活用にはデータが欠かせないため、Db2 12.1へのバージョンアップ支援も積極的に提案していきたい。IBMのソフトウェアは今後もAIの力で進化する。構造化データと非構造化データのハイブリッド利用のニーズも大きいため、こうした領域に対しても戦略的に投資する予定だ」と述べた。
クラウド Watch,藤本 京子