遠征帰りは耳や鼻の穴が真っ黒…1日2勝は2度・小山正明さん プロ野球のレジェンド「名球会」連続インタビュー(38)
プロ野球のレジェンドに現役時代や、その後の活動を語ってもらう連続インタビュー「名球会よもやま話」。第38回は小山正明さん。「精密機械」と称された制球力を武器に歴代3位の320勝を挙げた、昭和の匂いがする名右腕です。当時のプロ野球界を取り巻く過酷な環境は、現在では考えも及びません。(共同通信=中西利夫) 代名詞は「カミソリシュート」 社会人時代のサヨナラ被弾を糧に成長した 元大洋投手の平松政次さん プロ野球のレジェンド「名球会」連続インタビュー(3)
▽もう1000年たっても300勝なんでできない 僕はテストで阪神に入ったものだから、統一契約書の契約をしてもらえませんでした。今で言う育成選手。それからは、ほとんどの日が1軍の打撃投手です。当時はチーム専属の打撃投手がいないので、どんどん投げました。試合前のフリー打撃の時間は40分~1時間。10分で50~60球を投げます。それを1人で投げたりしたので強い肩ができました。完投で120~130球投げても、びくともしません。よく叱られました。「ストライクぐらい投げろ」「毎日、何の練習をやってるんだ」。先輩打者にどなり声を上げられると、なお緊張してしまって。来る日も来る日も投げて、どうやってストライクを放ろうかという気持ちしかなく、最終的にはコントロールにつながっていきました。打者が入ると、ものすごくええ練習になるんです。成長過程の一つとして、後の小山を生んでくれたということでしょう。 ここでストライクが欲しいという場面で、今の投手はストライクが取れません。挙げ句の果てに四球の大安売り。その最たるものが(2017年4月の)阪神と広島の試合でプロ野球タイ記録の26四球。考えられません。投げ込んでコツをつかむ。そういう道を歩んでいる人は皆無でしょうね。春季キャンプのブルペンで50~60球投げると翌日は新聞の活字になりますが、僕たちの時は一本立ちしてからキャンプで投げる球数は1日に100、200というもんじゃなかった。よく言われるんです。320勝すごいねと。もう100年たっても1000年たっても、間違いなく300勝なんてできません。そういう数字が出てくるまで耐えられた自分に誇りを感じます。