寒中EV航続距離レースでぶっちぎりの優勝! テスラを破った中国の高級EV「HiPhi Z」ってなにもの?
中国の新興EVメーカーから登場した「HiPhi Z」
寒くなるとEVはバッテリーの性能が低下して、航続距離や充電時間などが通常時よりも悪化する。 【画像ギャラリー】中国の新興EVメーカーHuman Horizonsの「HiPhi Z」のその他の画像を見る EVユーザーならば先刻ご承知かと思いますが、これをきちんとテストしている「極寒のEV航続距離レース」があるのはご存じでしょうか。1月とか2月、もっとも気温が下がり、積雪まであるというノルウェーの地で行われるテストで、各国メーカーのEVが競い合っているのです。 ご想像のとおりというべきか、2020年から3年はテスラが圧勝。ですが、2024年の冬はテスラ・モデル3が23台中22位という惨敗に終わっただけでなく、中国の高級EV「HiPhi Z」がトップに躍り出るという予想外の結果となったのです。 HiPhi Zは、中国の新興EVメーカーHuman Horizons(華人運通)が2022年に発売した4ドアセダン。GT-Rにどことなく似た顔つきや、4066個のLEDで構成される世界初のラップアラウンド・スターリングISDライトカーテン、120kWhという数値を誇る高性能かつ大容量なバッテリーパックを搭載し、航続距離705km、0-100km/h加速は3.8秒というスペックを引っさげての登場でした。 これが、ノルウェー自動車協会が主催する「El Prix」すなわち、毎年夏と冬に行われるEV航続距離レースに参戦。今回は気温がマイナス10°以下の環境で航続距離を競い合ったということです。ちなみに、El Prixは実際に走り切った航続距離のほか、WLTP基準の航続距離と、氷点下で実際に走行できる航続距離との差も明らかにしています。
「HiPhi Z」が約521kmを走りダントツの首位!
これによると、2023年に首位に立ったテスラ・モデルSは、WLTP基準から約105km、16%の乖離、すなわちカタログ値よりも悪かったことが報告されています。もっとも、テスラをかばうわけでもありませんが、フォルクスワーゲンID.7は公称の航続距離から約195km手前でアウト、ボルボにしてもC40が約177km不足(30.9%)するなど、欧州EVメーカーは総じて低調な結果に終わっているのです。 そんななか、HiPhi Zは約521kmを走り切り、WLTP値(555km)との差はわずか約34kmというダントツの首位! にわかには信じがたいと思われるでしょうが、製造元のHuman Horizonsによれば、ヒートポンプを用いた効率的なAC空調システムと、インテリジェントな温度管理システム「E-Powertrain」とを組み合わせた結果と、自社開発した温度管理システムにアドバンテージがあったとしています。 たしかに極寒のなかでは室内の空調(テスト時はオートエアコン任せでなく全車とも温度計を使って21度に調節)はもちろん、バッテリーの温度低下が無視できないビハインドとなることは確か。HiPhi Zはスタイリングだけでなく、このあたりのハイテクも一歩リードしていたに違いありません。 現在、低温下でのバッテリー効率の低下に対してはさまざまな研究がなされており、そのなかには寒いときにバッテリーの電力を一部使用することで、バッテリー自体を温かく保つことや、内部に液体をもたない安定性の高い全固体電池の開発といったメニューが挙げられています。当然、Human Horizonsその道のトップランナーに名を連ねていますが、今回の航続距離レースで苦杯をなめたテスラや他社が猛追することは間違いないところ。 とはいえ、これだけのパフォーマンスに加え、さまざまなドライバーサポート、アメニティを搭載しながら10万5000ユーロ~(約1700万円)というプライスタグに対抗できるメーカーは、さほど多くないのが実情でしょう。EV界におけるHiPhi車はこれからも目を離すべきではないでしょう。
石橋 寛