【新春ビッグ対談】連載33年格闘漫画「刃牙」シリーズ板垣恵介×大宅賞作家・増田俊也
「今も昔もとにかく褒められ続けたい」(板垣)
板垣氏は「刃牙」シリーズ4作目の「刃牙道」で、天下の剣豪・宮本武蔵を現代に蘇らせている。その武蔵が闘う理由を問われ、「誉め讃えられたいのだ!!!」と叫ぶシーンがある。 板垣 活力ということでいえば、俺は10年以上前から言っているのは、今も昔もとにかく褒められ続けたい。「刃牙道」で武蔵に言わせたのはまさに俺自身の思い。 増田 板垣さんが褒められて一番うれしいのは誰ですか?奥さま? 板垣 奥さんは、褒めてはくれない。感謝はされる。それはうれしい。 増田 読者に褒められるのが一番? 板垣 それはある。読者の反応、Xとかは見るようにしている。聞こえのいいやつだけを担当編集に集めてもらって、それは見る。褒められたい、褒められるっていうのは改めて燃料ですよ。一番うれしいのはって聞かれたら……、師匠かな。亡くなってしまったけど。 増田 小池先生は褒めてくださることはあったんですか。 板垣 なかったね。逆に20年近く前、塾頭の古希の祝いで塾のOBが集まった時、塾頭に「今現在、何本書いてるかじゃなくて、今まさに売れるものを書いて欲しい。70歳でも売れる作品を書けるんだって、お手本を見せて欲しい。そうすれば、俺たちがこれから進むのが楽になる」って言ったことがある。 増田 でも、もう生み出せなかったと。 板垣 ダメだった。「範馬刃牙」で刃牙と勇次郎の親子喧嘩を描いた時、塾頭が「結末についてアドバイスをしたかったけど、言っちゃうとおまえが影響されるからしなかった」と言われてね。 増田 小池先生のアイデアはどんなものだったんですか? 板垣 聞いたけど、お話にならなかった。 増田 さっきの廃用性萎縮の話じゃないですが、やっぱり生産し続けないと衰える。 板垣 衰えた。ひどく衰えてた。 増田 全盛期は今の板垣さんから見ても凄かったですか? 板垣 「子連れ狼」はもちろん「首斬り朝」「ぶれいボーイ」……そりゃ、凄かった。毎回、読み切りでよくここまでまとめ上げるなという力を持っていた。それでも、やり続けなければ衰える。 増田 その時の板垣さんの思いはやはり寂しい感じでしたか? 板垣さんはよく僕に言いますよね、「塾頭がいなければ板垣恵介は生まれなかった」と。 板垣 それは間違いない。感謝しているし、尊敬している。衰えを見たくはなかったけど、塾頭の娘さんは「小池一夫は10年長く書きすぎた」という言い方をしてた。