【揺れる性】男性を好きになり、手術までして女になったのに…40歳”男性”が打ち明ける想定外の結論
男か女か?
パリオリンピックの女子ボクシングで「性別騒動」が起こったことは記憶に新しい。66キロ級に出場したアルジェリアのイマネ・ケリフ選手に対して、“トランスジェンダーの男が女を殴っている”など虚偽情報や誹謗中傷がネット上で大量に拡散され、ケリフ選手はパリの検察当局に告訴状を提出したとも報道された。 【マンガ】「南海トラフ巨大地震」が起きた時、もし「名古屋港」にいたら… 今回、思いがけず「性分化疾患」(DSD =Differences of Sex DevelopmentまたはDisorders of Sex Development)が広く知られることとなった。厚生労働省によれば、日本では4500人に1人ほどの割合でDSDが推測されるというから、実際はそれほどレアケースともいえない。私たちのすぐそばにもDSDの人たちがいるかもしれない。 ちなみに、性分化疾患はトランスジェンダーとはまったく違う。簡単に言ってしまえば、トランスジェンダーは心の性と体の性が一致しない状態。だが性分化疾患は、性染色体、性器、子宮、膣、卵巣、精巣など性に関わる身体構造や機能が、多くの人とは違う、体の疾患の総称で、40種類以上あると言われている。 たとえXY染色体をもっていても性器が他の男性とは著しく異なっていたりするわけだ。産まれてすぐに性器で性別が判断できない、男の子なのに思春期に胸が大きくなる、不妊など、さまざまな事例がある。 つまり性分化疾患は、男でも女でもない別の性というわけではなく、女性にも男性にも生まれつきさまざまな体の状態があるということだ。人は身体的に「男性/女性」と二分できるわけではなく、個人差が存在する。近年では“疾患”(Disorder)ではなく、より中立的な“差異“(Difference)であるという捉え方が広がっている。決して性自認や性的指向の問題ではない。
10人に1人!?「LGBTQ+」は、限りなく千差万別だった
ではLGBTQ+とはどういう人たちなのか。LGBTQ+は性的マイノリティ(性的少数者)を表す総称のひとつとして使われ、日本ではさまざまな調査によりばらつきがあるが、現在、人口の3~10パーセントが該当すると言われている。 Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、出生時に割り当てられた性別と性自認が異なる人)、QueerやQuestioning(クイアやクエスチョニング)、その他にもさまざまあるということで、「+」が付けられる。 「+」にはたとえばXジェンダー(自身の性を男女いずれかに限定しない人々)、Aロマンティック(他者に恋愛的に興味関心を抱かない人々)、Aセクシュアル(他者に性的に興味関心を抱かない人々)、パンセクシュアル(性的指向が性別にとらわれない人々)……などなどが含まれる。まさに性と、それをとりまく状況は千差万別で、個人の数だけ性があると言ってもいいのかもしれない。 自分の性自認も恋愛対象(性的指向)も、実は固定化したものではないようだ。筆者がこれまで男女関係の取材を続けてきたなかでも、そんな揺れる性に気づいた人がいる。 どうしても女性になりたくてなったものの、実は違っていたとあとで気づいた人、自分は異性愛者だと思って結婚したあとで、同性を愛するようになった人──。まずは男性として生まれ育ったユリカさんのケースを取り上げてみよう。