アトレチコ鈴鹿クラブ誕生物語。元Jリーガー社長が主導し「地元に愛される育成型クラブ」へ
健全に経営が回るクラブの実現は「10年単位の仕事になる」
Jクラブの売上構成を見ると、どのクラブもスポンサー料収入がかなり多くを占めている。スポンサー料収入に次ぐ収入源がチケット収入だ。他にもリーグの配分金、グッズ販売、スクール事業といった収入源がある。一方で彼らが鈴鹿で開拓しようとしている領域は移籍ビジネスだ。 「海外を見ると、選手の移籍が大きなビジネスです。1000万の選手の価値を1億にするためには相当な運が必要で、ギャンブル性も高いですよね。我々はそういうことをいうのでなく地場の選手を育てて、1軍に上げてそこで鍛えて、ビッグクラブにその選手が移籍する持続的なローテーションを作りたい。スポンサー収入、チケット収入と、選手を移籍料収入で健全に回すクラブを将来的に作りたいと思います。ゼロから始まるので、10年単位の仕事になると思います」 当然ながら育成年代にも目を向ける必要がある。ただ「トップを強化するためにアカデミーがある」という発想を斉藤は持っていない。 「鈴鹿は今ユースチームが無いのですが、アカデミーはマストです。Jリーグへ行くためにユースチームを作るのでなく、逆にユースチームが無いならJリーグに行く必要はないというのが僕の持論です。『地域に普及させる』のがJリーグの理念で、普及にはアカデミー、スクールが必要です。トップを中心に裾野が広がるにしても、一番重要なユースが抜けたら、メソッドを一気通貫でやれません」 育成型クラブをメソッドから構築するとなれば、当然ながら選手や指導者の品定めする目利きが必要だ。ソフト・ハードの両面で投資も必要となる、経営的なチャレンジでもあろう。ただ、斉藤社長や三浦泰年監督の知見が生きる分野だ。 一貫性の大切さについてはこう述べる。 「ビッグクラブになったチームはメソッドがあり、育成機関がしっかりしていているからこそ、ビジネス路線に乗っているのだと思います。そこがブレていたり、フロントと現場が乖離していたり、『今日はブラジル、明日はドイツ、そしてまた日本』みたいなことになったら、チームはいい方向に進まないでしょう」