アトレチコ鈴鹿クラブ誕生物語。元Jリーガー社長が主導し「地元に愛される育成型クラブ」へ
クラブは不祥事で失った信頼を取り戻す必要がある
斉藤社長がトップチームを軽視しているわけではない。 「ベテランがいて、中堅がいるから、若手も育ちます。Jリーグ昇格、優勝は目的でなく『プロセス』だと思いますけど、上を狙わない限りはチームも成長していきません」 「具体的に何をやるかは、これから考えなければいけない」と前置きしつつ、斉藤社長は今後の展開をこうイメージする。 「大きい話になってしまいますけど、例えばサッカーを軸に合宿所みたいなものを作って、温泉施設を作って人を集めて、スマートシティにしてゼロエミッションも絡めて……。そういう挑戦で、サッカーというコンテンツからしっかりビジネスを生み出せれば、プロチームとしても非常に近代的なビジネスモデルになると思っています」 一方で足元を固めることも必要で、クラブは不祥事で失った信頼を取り戻す必要がある。斉藤社長は自ら地域に足を運び、直接ビジョンを語る「どぶ板」的なプロセスを始めている。 「オーナーをチェンジしたことによって『どのような考え方でやるのか』と皆さんは興味を持ってくださっていると思います。既に30社ほど、ご挨拶に行きました。アカデミーやスクールも、お父さんお母さんたちが『あんなクラブに子どもを預けて良いのか』と不安がられたら、どうしようもないですよね」 三浦泰年監督についてはこう述べる。 「ヤスさんは現場の監督です。パワハラ問題で出場停止処分を受けて、ヤスさん自身も話していてそれを気にされていました。『自分を変えよう』という気持ちが、僕にも伝わっています。一方でプロチームとなると試合中は感情的になるし、許される範囲でエモーショナルなところを見せなきゃいけないときも当然ある。でもそれが限度を超えてしまったとき、誰かが手綱を引いてあげなかったら、同じようなことを繰り返す可能性があります。ヤスさんのみならず従業員、選手については、コンプライアンス委員会ではないですけど、(研修など)何かしらの体制を用意します」