【F1前半戦レビュー:キック・ザウバーの“プラス”と“マイナス”】ビノットと新ボッタス/進歩のない周冠宇
F1前半戦が終了した段階で、ベテランジャーナリストのピーター・ナイガード氏が、全10チームそれぞれの良かった点と悪かった点を挙げる形で、ここまでの14戦の戦いを振り返った。今回は、コンストラクターズ選手権で10位のキック・ザウバーの前半戦レビューだ。 【写真】2024年F1第5戦中国GP レース後、ファンに挨拶する周冠宇(キック・ザウバー) ────────────────── ■プラス:ニュー・バルテリ・ボッタス キック・ザウバーの2024年シーズン前半において、良いニュースはほとんどない。2026年のアウディとしての参戦に集中し、今は現状維持に甘んじているのは明らかであるため、今年はコンストラクターズ選手権最下位10位に終わる運命と思われる。 しかし、サマーブレイク直前に、フェラーリ元チーム代表マッティア・ビノットがCOOおよびCTOに就任したことは良いニュースといえるだろう。これまでザウバーのリーダーシップには、アンドレアス・ザイドルとオリバー・ホフマンが権力争いをするなどして、やや混乱が生じていた。ビノットが加わったことで、チームはようやくアウディのワークスチームとしての将来への備えをスムーズに進めることができるのではないだろうか。 チームに関して良いこととしてもうひとつ考えつくのは、バルテリ・ボッタスが真のキャラクターを定着させつつあることだ(結果自体はさほど素晴らしいものではなく、強力でないチームメイトよりは良い、というレベルだが)。 メルセデスでの5シーズンの間、ボッタスは現役ドライバーのなかで、最も退屈なドライバーのひとりだった。メルセデスの“グレー”の企業イメージに完全に適合していたのだ。 だがザウバーでの2年間を経て、本物のボッタスが姿を現した。彼は実は楽しいことが大好きな男なのである。いまやボッタスは、現役F1ドライバーのなかで、最も特徴的なキャラクターの持ち主のひとりだ。 ■マイナス:国籍しかアピールポイントがない周冠宇 周冠宇は中国初のF1ドライバーであり、母国ではスーパースターだ。今年の中国GPではファンから熱狂的な歓迎を受け、メキシコシティでのセルジオ・ペレスと変わらないほどの人気だった。 2024年は周冠宇にとってフルタイムF1ドライバーとしての3年目で、ボッタスのチームメイトとして58戦を過ごしてきた。昨年はボッタスと互角に戦えるように見えた時期もあったが、今年はそうした有望さはほぼ消え去った。周冠宇は2024年シーズン前半に期待外れだったひとりであり、F1における将来に深刻な疑問が投げかけられている。 今の状況のままでは、彼のF1キャリアを救えるのは、彼の国籍だけということになってしまうかもしれない。中国がF1にとって重要な市場であることが、彼の助けになるかどうかだ。 ■データ(2024年シーズン第14戦終了時) コンストラクターズ選手権の順位:10位 チームメイト勝敗(予選):ボッタス対 周冠宇 13:1 チームメイト勝敗(スプリント予選):ボッタス対 周冠宇 2:1 チームメイト勝敗(ポイント):ボッタス対 周冠宇 0:0 2025年の予定ラインアップ:ニコ・ヒュルケンベルグ、? [オートスポーツweb 2024年08月19日]