洗濯王子・中村祐一が説く「洗濯の基本となる3つのポイント」
だから、素材の特徴知ってそれに合わせた洗い方を考えることが大事です。それは洗濯のためでもありますが、一番は状態良く着るために必要なことです。そして、この視点があると服を買うときにも選び方が変わり、本当にいい服を選べるようになるはずです。
ー洗濯した後、干す際の注意点はありますか。 外干しだと、どうしてもほこりや排気ガスが付いてしまいます。素材によっては紫外線による色褪せが起きてしまいますし、時間や天気に縛られやすいので、部屋干しのほうがメリットが多いと思います。 部屋干しの場合、室内の湿度が上がりやすく、湿気が乾いた服のほうに移らないように工夫する必要があります。部屋干しを避ける方は、臭いを気にするからでしょうが、それは先ほどの洗濯の基本を押さえていただければ解消します。 部屋干しだから臭うのではなく、しっかりと落とせなかった汚れが菌の餌になり、菌が出した排泄物が臭っているので、菌の餌になる汚れをきちんと落としておけば、部屋干しでもニオイません。
ー洗濯の基礎を押さえたうえで、洗剤や洗濯機で意識すべき点を教えてください。 洗剤は大きく2種類です。弱アルカリ性か中性で、パッケージ裏の液性という欄に書かれています。 洗浄力を求める場合は、弱アルカリ性です。先程のように白い綿やポリエステルのTシャツなどをしっかり洗い上げたいときに使います。逆に、黒い綿のTシャツといった色物を洗う場合は、中性洗剤が向きます。アルカリ性になると色落ちがしやすくなるためです。
ウールやシルクといったタンパク質性の繊維も中性ですね。 弱アルカリ性だと繊維自体が溶けてしまいます。ただし、ウールやシルクなどは、基本的にクリーニングが向く素材です。中性洗剤で洗ったとしても、素材のハリやコシがなくなったり、風合いの変化は起きてしまうので、クリーニングに出すことをおすすめします。
洗濯機も縦型かドラム式か聞かれることが多いですが、どちらも一長一短あります。 まとめて洗う場合は、一度に量が入り、水の量もある程度調整できる縦型洗濯機のほうが洗いやすいです。日本の家庭事情に合わせると縦型のほうが合っているかもしれません。 ドラム式は、洗える衣類の量が少なくなります。ドラムの上から落下する際の叩きによって汚れが落ちる仕組みなので、大量に洗おうとすると衣類がくるくる回るだけになってしまいます。構造上、色移りや逆汚染がしやすいので、衣類の入れすぎに注意し、白物は白物だけで洗い、色物は別で洗うなど工夫が必要です。 もちろん、ドラム式にもメリットはあります。乾燥まで考えたときは、ドラム式のほうがむらなく乾かしやすいですし、叩き洗いのため衣類が傷みにくいです。縦型の場合はこすり洗いになるので、毛羽立ちやすかったり繊維が切れやすかったりします。 とはいえ、いずれも家庭での洗濯機の話ですので、それほど大差はありません。買い替えというよりは、今ある洗濯機をフルに活用できる使い方をしてあげてください。 ー今後の活動の展望を教えてください。 現在、数名のクリーニング屋さんと共同で洗濯講座を行っていますが、洗濯への意識はまだまだ低いと感じます。 これは、衣服への意識が低いことが関係していると思います。 食や住に比べ、衣への提案は少なく、適切なものがまだまだ足りていないように感じるので、ここへの提案を続けていきたいと思います。 洗濯は、単に汚れを落とすことが目的ではありません。繰り返し伝えているように、皆さんが気に入って購入された衣服をより快適に、より長く着用できるようにするために洗濯があると考えています。 より良く着るため、広く言えば、より良く暮らすための洗濯の提案を続けていきます。