洗濯王子・中村祐一が説く「洗濯の基本となる3つのポイント」
ー活動の一環として始められた「センタクスタジオ」はどういった目的があるのでしょうか。 こちらは料理教室におけるキッチンスタジオのようなものです。洗濯を教える教室として、2014年から始めました。 洗剤の選び方からアイロンのかけ方まで、広く洗濯に関わる技術を教えてきました。 現在は閉鎖し、「センタクアトリエ」へと姿を変えましたが、洗濯講座は、現在もクリーニング屋の仲間とオンラインや全国各地で開いています。
ー「センタクアトリエ」は、どういった目的で建てられましたか。 長野県の自宅兼仕事場で、洗濯を生活の中心に据えた設計の家になります。 当時、ランドリールームや洗濯のスペースが家の中にあるのは稀でした。どちらかというと、洗濯は隅に追いやられがちで、洗濯機が置ければいいという間取りが多かったと思います。皆さん、キッチンやリビングには予算を割くのですが、衣食住の衣については、あまり意識が向けられていなかったと思います。 洗ってから、干す、畳む、収納するという衣類の導線を考えると、暮らしがより良くなるという提案をしたかったので、そのモデルとなるアトリエを建てました。 住宅関連の会社さんとのやり取りなども増え、センタクアトリエができた2018年以降からランドリールームが標準装備されるようになったお家が増えてきた印象です。
洗濯の基礎がすべてを解決
ー多くの人が勘違いしている洗濯の仕方はありますか。 いくつかあるのですが、「洗濯で汚れを落とす」ことにフォーカスが当たりすぎています。問題なのは、「服」が抜け落ちている点です。 どのような服を洗うのかが大事なポイントで、それに対して適切な洗濯の仕方が決まってきます。服の情報がなければ、汚れを落とすにしても的確にできません。 それを無視するから、色落ちや縮み、型崩れといった問題が出てきますし、また、どこまでの洗浄力に耐えられるかわからないので、過剰に洗浄力を弱くしてしまい適切に汚れを落とすこともできません。なんとなく傷みそうという理由でネットに入れて洗濯している人も多いのですが、それも洗浄力を不要に下げている原因です。 きちんと服を見ることができたら、ご家庭での洗濯でネットを使う必要はほとんどなくなるはずです。皆さんが気にされる黄ばみや臭いなども、しっかりと洗えていないことに由来します。 ですから、服を洗う前に服の素材を確認することから始めてみてください。それがわかると、洗濯が楽しくなりますし、買ったときの良い状態のまま、長く着続けることができるようになります。 ー洗濯の基本をぜひとも教えてください。 洗剤や洗濯機をどうしたらいいかと気にされる方も多いですが、前提として、正しい洗い方を実践してみてください。 洗い方の基本で意識すべきは、3つの量と3回のすすぎです。3つの量とは、衣類の量、水の量、洗剤の量になります。 たとえば、人気のドラム式洗濯機ですと、洗濯する衣類の量はドラムの半分ほどに抑えるといいです。また、最近は洗濯機の水量が節水が標準になってしまい、十分な量の水で洗えているとは言い難い状況なので、水量にも注意が必要です。 目に見える汚れがないからといって、洗剤の量を減らす方もいますが、それは避けてください。洗剤は一定の濃度がないと汚れを包み込むことができないため、洗剤濃度が足りないと洗濯しているのに、逆に汚れが衣服に戻る「逆汚染」というものが発生します。これが洗濯物の黒ずみや、黄ばみ、臭いの原因にもなってきます。 そのうえで、すすぎも重要です。すすぎの役割は、汚れをしっかりと薄めて流し切るというものです。それを考えると3回は必要というのが、プロのクリーニング屋の常識です。すすぎを1回から3回に増やすという意識ではなく、3回が基準だと覚えてください。 これらを意識すれば、今の大抵の洗濯の悩みは解決します。 ー節水目的でお風呂の残り湯を使う方もいますよね。 水温を上げることによる洗浄力の向上は見込めますが、残り湯を使う場合、すでに水の中に汚れが含まれているので、衣類の汚れを落とすための洗剤がそちらにも取られてしまい、洗剤量が足りなくなることがあります。 残り湯の汚れの分だけ洗剤の量を増やしたり、更にすすぎも、より注意しないといけないことを考えると、残り湯での洗濯のメリットは少なくなってしまいます。 お湯を使って洗う場合、僕らがおすすめしているのは、お風呂に入る前のきれいなお湯を先取りして使うというものです。洗いとすすぎ1回目までは、きれいなお湯で洗う。そうすると冷たい水だと落ちにくい皮脂汚れなどもさっぱり落とせます。 ー洗濯の際に、洗濯表示マークは意識すべきでしょうか。 洗濯表示マークは服の取扱説明書のようなものなのですが、現在の服のほとんどは、製品化した後にしっかりと洗浄テストをしていないものが多く、これは衣類や洗濯の中にある問題の一つだと思っています。パーツごとの試験結果だけで、無難な表示が付けられていたり、絵表示だけでは適切な洗濯にならないことも多いです。