[MOM4895]愛工大名電MF蒲地壮汰(3年)_持ち味異なる“蒲地ツインズ”、兄・陽汰にも譲らなかったPK先制弾
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] [11.3 選手権愛知県予選準決勝 東邦高 0-3 愛工大名電高 ウェーブスタジアム刈谷] 【写真】影山優佳さんが撮影した内田篤人氏が「神々しい」「全員惚れてまう」と絶賛の嵐 今年の愛工大名電高の顔と言える存在が、MF蒲地壮汰(3年)とDF蒲地陽汰(3年)の双子だ。顔は似ているが、プレースタイルは全く違う。兄の陽汰がボールに対して強く行けるCBであるのに対し、弟の壮汰はドリブルが売りのアタッカー。東邦高と対戦した準決勝では双方の活躍が目を惹いたが、試合の流れを引き寄せる意味では壮汰の先制点が大きかった。 「サッカーは絶対に自分ができないものを持っている。壮汰と同じドリブルをしろよと言われたら絶対にできないし、壮汰みたいに走れよと言われても絶対にできない。そこはリスペクトしています」。そう口にするのは陽汰で、勢いに乗ったらドリブルは止められないという。 だが、この日の立ち上がりは自らの特徴よりもチームのためのプレーに徹していたと壮汰は振り返る。その理由についてこう話す。「前半からしっかり押し込んで、前線が運動量を出す。それに球際で負けない。強度高くやろうと言われていたので、自分の持ち味であるドリブルよりも走ろうと思っていました」 追い風を生かしたロングボールで東邦を押し込む中、壮汰は懸命に相手エリアを走り回ってセカンドボールを回収。高い位置で拾ったら「失わないプレーが自分の長所だと思っているので、自分のところでタメが作りたかった」と巧みなドリブルを駆使して、相手エリアで時間を作った。 見せ場が訪れたのは前半19分。MF斉藤騎士(3年)がヘディングで落としたボールに反応したFW杉本悠悟(1年)が倒され、PKを獲得すると壮汰がキッカーに名乗り上げた。この場面は実は、キャプテンである陽汰が蹴るつもりで、宮口典久監督に「蹴って良いですか?」と確認しにいっていたという。だが、壮汰に譲る気配はない。陽汰は「最初からずっとボールを持っていたので行くなら行けと思った」と苦笑いしつつも、「心配していなかった」と続ける。 壮汰が譲らなかった理由はある。「PKは外す気がしなかった。前日練習でPKを蹴る機会があるのですが、自分の狙ったコースにうまく蹴れる回数が多くて自信になっていた」。言葉通り、冷静に蹴りこんだシュートがゴールネットを揺らし、愛工大名電が先制した。 準決勝の舞台はウェーブスタジアム刈谷。中学時代、刈谷市にある「刈谷81FC」でプレーしていた2人にとっては所縁のあるグラウンドだ。この日は中学時代の恩師や地元の友だちが応援に来ていたという。「新人戦もインターハイも良い結果が残せなかった。こういう大きい舞台で自分のプレーを見てもらえるのは嬉しい」と話す壮汰は随所で持ち味であるドリブルを披露し、3-0での快勝に貢献した。 「名電に惹かれたのはスタイル以上に、練習に行った時の印象が良かったから。本気でサッカーに打ち込んでいるし、凄く明るかった。入ったら自分も楽しくサッカーができるかなと思った」。そう振り返る壮汰が先に愛工大名電への入学を決め、進路を決めかねていた陽汰が続いた。高校に入ってからの成長は大きい。持ち味のドリブルに磨きがかかっただけでなく、細かいステップや身体を当てるタイミングをスタッフに指摘され、守備も成長。サッカー選手としての完成度が高まった。 そうした成果が今大会でも表れている。2年連続で敗れていた準決勝の壁を乗り越える原動力になったのは間違いない。「自分は昨年、選手権を経験してベスト4の難しさは分かっていた。まず準決勝まではいかなければいけないというプレッシャーもあったので、まずここに来れたことホッとしているし、今日乗り越えたことが凄く嬉しい。ここで勝っても、次勝てないと結果は一緒なので何が何でも乗り越えたい」。そう意気込む通り、決勝でも攻守に渡る活躍を披露し、勝利に貢献するつもりだ。 (取材・文 森田将義)